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 月額わずか4万円で「全国住み放題」という賃貸サブスクリプションサービス「ADDress」を打ち出したアドレス(東京・千代田)。当初はフリーランスなど時間の融通の利く層からの支持を得ていたが、コロナ禍で一転。一般ビジネスマンにも広く注目される存在となった。インタビュー編の1回目は、多拠点居住というユニークなサービスを開発した狙いと、コロナ禍で変化した会員プロフィルについて、同社代表取締役社長の佐別当隆志氏に聞いた。

アドレス代表取締役社長の佐別当隆志氏(写真:都築 雅人)
アドレス代表取締役社長の佐別当隆志氏(写真:都築 雅人)
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全国を転々としながら暮らす“アドレスホッパー”も

賃貸住宅というと、毎月賃料を払い、1つの部屋や建物を借りて住むというのが通常の契約形態だと思いますが、ADDressは全国の拠点を自由に移り住めるというユニークな賃貸借システムです。複数の住まいを提供するという発想は、どこから生まれたのでしょうか。

 僕自身が以前、都内のオフィスに毎日出勤し、都会だけで生活することに違和感を覚えていましたし、同じ思いを持つ人が増えているなと感じていました。僕は住まいをいろいろ変えてきましたが、誰もが簡単に住み替えや移住を実現できるわけではありません。一方、地方部では人口減少や空き家問題が深刻な地域課題となっています。

 IT(情報技術)の進展などによって、自宅を固定化せず、柔軟に拠点を変えながら働くという暮らし方もあるのではないか――。「空き家を使った多拠点居住サービス」が、都市と地方それぞれの課題解決につながるのではと気づいたのが、ADDressを企画するきっかけです。

ADDressのウェブサイトのトップ画面(資料:アドレス)
ADDressのウェブサイトのトップ画面(資料:アドレス)
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自宅でシェアハウスを運営し、一般社団法人シェアリングエコノミー協会を立ち上げるなど、佐別当さんはシェアリングエコノミーの普及や啓発に努められてきました。ADDressの仕組みもまた同じ文脈上にあるのでしょうか。

 シェアリングをキーワードに、日本に多様な働き方や暮らし方を提供していきたい。自己所有から共同利用へと人々の消費スタイルが変化しているように、シェアリングは日本のさまざまな社会問題の解決に有効な手法と考えています。

 ADDressでは全国の拠点群を「多拠点コリビング」と呼んでいます。シェアハウスが1つの家に共同で暮らす形態だとしたら、そこを仕事の場にも活用するという考えが「コリビング」です。ただ、ADDressはスペースのシェアだけでなく、人口移動による都市と地方における「人口のシェアリング」とも捉えています。

どのような層がADDressに興味を示しているのでしょう。

 ADDressの立ち上げは2019年4月ですが、当初はフリーランスや外資系企業の社員など、どこでも働くことのできる身軽な職種の人が興味を示してくれました。こうした会員は平日・休日関係なくADDressの家を利用し、仕事もオフも楽しまれています。中にはそれまでの賃貸住宅を解約し、全国のADDressの家を転々としながら暮らす“アドレスホッパー”もいます。

 もう1つのタイプが、平日は都心に勤務しつつも、週末はオフタイムを充実させたいというビジネスマンとその家族です。自宅は通勤利便性を優先し、平日は仕事に打ち込む。週末はADDressの家を使って地方で過ごすといった使い方をされています。

ADDressの家の共用スペース例(左:鎌倉B邸、右:習志野A邸)。共用のダイニングやリビングがワーケーションの場となり、会員同士や家守との交流の場になる(資料:アドレス)
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ADDressの家の共用スペース例(左:鎌倉B邸、右:習志野A邸)。共用のダイニングやリビングがワーケーションの場となり、会員同士や家守との交流の場になる(資料:アドレス)
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ADDressの家の共用スペース例(左:鎌倉B邸、右:習志野A邸)。共用のダイニングやリビングがワーケーションの場となり、会員同士や家守との交流の場になる(資料:アドレス)

会員に年齢層などの特徴はありますか。

 コアになるのは20~40代ですが、シングル、ファミリー、シニアと、さまざまな世代が思い思いの使い方で利用しています。若手のフリーランスだと、平日の昼間はコリビングスペースや個室を使ってリモートワークを行い、夜は家守(ADDressの家の管理人)や地域のキーマンと一緒に過ごしたり、空いた時間に温泉につかったり、大自然を満喫といったワーケーション的な暮らしを楽しんでいます。

 ファミリー層は家族連れでADDressの家を基点とし、自然やアウトドア、菜園での畑仕事などと多彩に楽しまれたりもします。また、時間のできた60代以降の方がリタイア後、全国各地を回って地方生活を楽しく過ごすなどといった使い方もされています。

 ただ今回のコロナ禍で、会員構成は大きく変わっていったんです。