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 異種材料接合(異材接合)のビジネスチャンスが大きく広がり始めた。締結要素や溶接を使わずに、異なる2つの材料を強固にくっつける接合技術だ。ユーザーが期待する最も大きなニーズに軽量化がある。鋼をはじめとする重い金属で構成された部品や材料を、より軽い材料で置き換えて製品全体の質量の軽減を図る。ここで、異種材料接合が必要になる。特に、燃費規制や二酸化炭素排出規制が厳しい自動車分野で軽量化ニーズを求める声が大きい。

 適材適所で軽量化材料を積極的に使って軽くする、自動車の「マルチマテリアルボディー」をターゲットに異種材料接合を開発したのが、マツダとUACJだ*1。アルミニウム(Al)合金と、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの熱可塑性プラスチックをくっつける摩擦撹拌(かくはん)点接合(Friction Stir Spot Welding;FSSW)である(図1)。

図1 摩擦撹拌点接合でくっつけたAl合金とCFRPもしくはGFRPとのサンプル
図1 摩擦撹拌点接合でくっつけたAl合金とCFRPもしくはGFRPとのサンプル
自動車のマルチマテリアルボディーの接合向けに開発した(写真:日経 xTECH)
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*1 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「革新的新構造材料等研究開発」の成果。

 特徴は、単にAl合金とCFRP/GFRPを強固にくっつけるだけではなく、将来の量産車向け組み立てラインでの実用化を想定して開発を進めていること。具体的には、鋼製ボディーの接合に使っている現行の抵抗スポット溶接(以下、スポット溶接)と同等の接合品質とコスト、生産性の実現を狙っている*2

*2 新しい異種材料接合技術をスポット溶接と遜色のないものにしたい理由は次の通り。将来的にマルチマテリアルボディーに移行しなければ、いずれ燃費や二酸化炭素排出規制を満たせないときが来る。とはいえ、CFRPは軽量化効果に優れるものの高コストであるため、量産車で使用できるのはボディーの一部、もしくは一部の車種に限られる。すると、高級車を造る欧州の自動車メーカーとは異なり、採算が取れないため、マルチマテリアルボディー専用の組み立てラインは造れない。鋼主体のボディーを造る既存の組み立てラインに、マルチマテリアルボディーの車種も流して混流生産するというのが「現実解」だ。これを実現するには、既存の組み立てラインにそのまま組み込める(インライン型の)異種材料接合技術に仕上げる必要がある──。

 

 摩擦撹拌点接合が対象とする材料は、Al合金が5000系および6000系Al合金で、プラスチックは熱可塑性であれば、理論上は種類を問わない。だが、両社が開発を進めているのは、汎用プラスチックであるポリプロピレン(PP)ベースのCFRPや、融点が285℃で耐熱性が高いポリフェニレンスルフィド(PPS)ベースのGFRPなど。中でも、軽量化効果に優れるCFRPの開発に力を入れている。そこで、ここからはAl合金とCFRPの接合に的を絞る。

 図2が、摩擦撹拌点接合に使うツール。大きな円筒(ショルダー)の先端に、プローブと呼ぶ小さな円筒を付けた形状。プローブは直径2.0×長さ0.35mmで、ショルダーの直径は10mmである*3

図2 摩擦撹拌点接合に使うツール
図2 摩擦撹拌点接合に使うツール
直径10mmの円筒の先端中央に小さな円筒形状のプローブが付いた構造(出所:マツダ)
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*3 ツールの大きさを含む接合条件は材料や形状などによって最適化する。

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