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 異種材料接合(異材接合)のビジネスチャンスが大きく広がり始めた。締結要素や溶接を使わずに、異なる2つの材料を強固にくっつける接合技術だ。その1つに、驚くほど簡便な方法がある。2枚の材料を重ね、棒状のパンチ(工具)で押して塑性変形させるだけ。金属表面の酸化膜や汚れを除いて内部をむき出しにした新生面同士を接近させると、原子間の結合が生じる現象を利用している。

鍛造プレス一発で新生面を生成

 冷間スポット鍛造による異種金属同士の接合技術を開発しているのは、中部大学工学部教授の石川孝司氏(名古屋大学名誉教授)らのグループだ。材料の押さえ方に少し工夫が必要だが「ビスやリベットのような部材(締結要素)が不要で、摩擦撹拌(かくはん)接合のような複雑な仕組みなしで簡便に接合したい、という用途に向く」(石川氏)。

 既に鋼(ステンレス鋼、高張力鋼)とAl合金(1000系、5000系)、Cu合金とAl合金などの組み合わせで良好な実験結果を得ている(図1)。鋼とAl合金の組み合わせは、鋼製部品の一部をAl合金で置き換え、軽量化を図るのに利用できると見ている。

図1 冷間スポット鍛造接合のサンプル
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図1 冷間スポット鍛造接合のサンプル
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図1 冷間スポット鍛造接合のサンプル
鋼とAl合金の接合により、鋼を部分的にAl合金に置き換えて軽量化を狙える(左)。CuとAl合金(右)にも適用可能で、熱や電気の流れやすさを保ったままCuをAl合金へ置き換える用途などが考えられる。(写真:日経ものづくり)

 Cu合金とAl合金の接合は、熱を逃がすヒートシンクへの応用などが考えられる。ヒートシンク全体をCu合金で作製すると、熱伝導特性は良好だが重くなる。Cu合金を発熱体に近いところにだけ使い、空気と接するフィンの部分はAl合金にすれば軽量化を図れる。「ロウ付けによるCu合金とAl合金の接合でヒートシンクを造る例があるが、たぶんスポット鍛造での接合の方が界面の熱抵抗が少ないなど、良い特性を確保できると思う」(同氏)という。