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デジタルツイン
日独大手が競演

 フィジカル(現実)空間に存在する「実物」をサイバー(仮想)空間に再現するデジタルツイン。デジタライゼーション(デジタル変革)の代表的な技術を工作機械に持ち込んだ新型NC装置を日本とドイツの大手2社がそれぞれ開発した。独シーメンス(Siemens)とヤマザキマザック(愛知県・大口町)だ(図1)。ワールドプレミア(世界初披露)の場としてEMO2019を選び、多くの来場者の注目を集めた。

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図1 デジタルツインを実現する2社の新型NC装置
(a)がシーメンス、(b)がヤマザキマザックの開発品。(写真:日経 xTECH)

工作機械の現場に「デジタルファースト」

 来場者が高い関心を寄せたのは、デジタルツインという最先端のデジタル技術が「従来の延長線を超える生産性向上を実現できるかもしれない」との可能性を感じさせたからだ。具体的には、工作機械でワークを加工する前の準備時間である「段取り時間」を短縮し、工作機械の実稼働時間を増やす。いわゆる段取り作業におけるムダの削減である。

 デジタル・トランスフォーメーション(Digital transformation:DX)に対応するデジタルネーティブNC装置「Sinumerik One(シヌメリック・ワン)」を生み出した─。EMOショーの自社展示ブース内で音楽と映像を使った目を引くプレゼンテーションを繰り返し、新型NC装置をアピールしたのがシーメンスだ(図2)。

図2 シーメンスによるプレゼンテーション
図2 シーメンスによるプレゼンテーション
デジタライゼーション時代に即した新しいタイプのNC装置であることを前面に打ち出した。(写真:日経 xTECH)
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 同社は「デジタルネーティブ」を「デジタルファースト」とも表現する。まず、加工現場の工作機械のデータを基にデジタルツイン、すなわち「仮想3Dモデル」を作成し、工作機械の動作やワークの加工をシミュレーションする。こうしてあらかじめデジタル上で問題がないことを確認した上で、現場にある工作機械で実際にワークの加工に入る。要はデジタルツインを工作機械に適用するためのNC装置を開発したとうたっているのである(図3)。

図3 「Sinumerik One」と仮想モデル
図3 「Sinumerik One」と仮想モデル
左側にあるのがSinumerik One、右側がデジタルツイン技術で作成した仮想モデル。(写真:日経 xTECH)
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 デジタルツインにより、同社は作業者の教育・訓練時間や工作機械の停止時間(ダウンタイム)を減らし、実際に加工を開始するまでの時間を大幅に短縮できると主張する。加えて、デジタル上で2度確認(ダブルチェック)してから工作機械を動かすため、より安全な加工現場を実現できるという。

 2020年初頭という発売時期の計画を確実なものとするため、同社は抜かりなく手を打っている。欧州を中心に工作機械メーカー23社に新しいNC装置を提供し、既に実証試験段階にあるのだ。

 例えば、伊ブレトン(Breton)は5軸マシニングセンター(MC)「Ultrix 900RT」に、仏BeAMは金属AM(Additive Manufacturing、付加製造)装置「Modulo 250」にシーメンスの新NC装置を搭載(図4、5)。それらを今回のEMOの同社ブースに展示し、実用化に向けて着々と歩を進めているとアピールした。

図4 ブレトンの5軸MC「Ultrix 900RT」
図4 ブレトンの5軸MC「Ultrix 900RT」
Sinumerik Oneを利用した実証試験を進めている。(写真:日経 xTECH)
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(a)
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(b)
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図5 BeAMの金属AM装置「Modulo 250」
指向性エネルギー堆積法を採用した小型部品造形用の金属AM装置(a)。(b)は造形したワーク。(写真:日経 xTECH)