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 膨大な数の論文から遺伝子変異の研究成果を探索し、がんに関わる変異などを解析する米IBMの「IBM Watson for Genomics(WfG)」。WfGは、がんの遺伝子変異に応じて治療する「がんゲノム医療」で存在感を増しつつある。東京大学医科学研究所(東大医科研)は2015年7月、日本で最初にWfG(当時の名称は「Watson Genomic Analytics」)を導入した。東大医科研での研究を率いてきたヒトゲノム解析センターの宮野悟センター長に、がんゲノム医療を手掛けるための技術的な課題やWfGを導入した理由について聞いた。

東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの宮野悟センター長
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの宮野悟センター長

がんゲノム医療を手掛けるため、東大医科研は2015年7月にWfGを導入しました。WfGはどのような役割を果たすのでしょうか。

 大量の英語論文を読みこなし、ある程度理解し、推論します。WfGが推論するのは、患者のがん組織の遺伝子変異のうち、どの変異ががんの原因に関わると思われるか、です。これが分かると医師は治療法を判断しやすくなります。

 WfGには自然言語処理や機械学習といった技術が活用されています。東大医科研に導入した当時は、2000万報ほどの医学・生物学系の学術論文の要旨から成るデータベース「PubMed」、1500万件超の特許データ、そして生命のメカニズムを解明した結果を収納した世界の公共データベースを学習している状態でした。WfGで解析すると2分程度で結果が出てきます。