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検収はビジネスの基本の「き」

 検収を行うことは発注者にとって責任であり義務である。検収を行うことで、最終的な支払いが確定し、システムやアプリの利用が開始され、そしてベンダーに瑕疵担保責任が生じるからだ。ビジネスの基本の「き」である。

 COCOAの事例だけではなく、一般のシステム構築においても検収をおろそかにすることで、後々問題が発生することが多々ある。特に瑕疵担保責任があるやなしや、でベンダーともめるのだ。

 受入テストをエンドユーザーも入れて念入りに行い、検収もきちんとした手順を踏んだ場合は、まずシステム稼働後の不具合発生比率が低い。また稼働後に不具合が見つかったらそれが瑕疵担保責任に該当するバグなのかどうか判断がしやすい。検収に労力をかけるのは「急がば回れ」であり、優良なユーザーとベンダーはそれを知っている。

 逆に検収をただの儀式程度に考えて、安易に出してしまうユーザーはベンダーからすれば要注意なのだが、ベンダーも早く検収してほしいので「きちんと検収してください」などとは決して言わない。この両者の姿勢が後のバトルの原因となる。稼働後になにか問題が発生するとユーザー側は「バグが出た。瑕疵担保責任だから無償で直せ」、一方ベンダーは「それは検収でOKをいただいたはずだ。だからバグではなく追加要望なので有償です」と話がかみ合わない。

 1+1=3になるようなトラブルならベンダーもバグと認識するが、「小数点以下は2桁ではなく3桁まで表示できないと使えない。瑕疵担保よろしく」などと稼働後数カ月経過してから言われてもベンダーは納得しない。

 いいかげんな検収をするユーザーほどなにか事が発生すると瑕疵担保責任を持ち出すし、また安直な検収を喜ぶベンダーほど本来は瑕疵担保責任の範疇であっても逃げたり、有償に持ち込もうとしたりする。お互いさまと言えばそれまでだが、日本は生産性が低いと言われるのはこのような不毛な争いやそれに伴う作業が少なくないからである。

 それを減らすには発注者が責任をもって調達し、検収を行う、そしてベンダーも目先の利益だけでなく、真摯に顧客と向き合うことが必要なのだが、本来その手本となるべき官公庁や大手ベンダーがCOCOAのようなことをやっているようでは、現実はお先真っ暗か。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
イントリーグ代表取締役社長兼CEO、NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)理事長。日本IBMの金融担当SEを経て、ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画、96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング、RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」「事例で学ぶRFP作成術 実践マニュアル」(共に日経BP)がある。