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 システム構築費用において発注時に甘く見られがちなものにマニュアルの作成費用がある。システムの発注は要件定義と設計以降など何段階かに分けて発注することが一般的だが、提案時にシステム構築全体の概算見積もりが示されることが大半だ。その概算見積もりの中にはマニュアル作成費用も含まれている。

 冒頭に記したようにマニュアルの作成費用は重きを置かれていないため、要件定義後の再見積もりでもほとんど見直されることがない。提案時の概算見積もりがそのまま確定見積もりになるのである。

 「システムにマニュアルは必ずついてくるもの」という意識の発注者が多いのは確かだし、ベンダー側も標準的な費用項目として考えている。それでいて、見積もりの段階で納品物としてのマニュアルの完成イメージを誰も明確に持っていない。

 プロジェクトが進み、そろそろエンドユーザーによる受け入れテストの準備が必要だという時期になって、さてマニュアルはどうしようとなる。マニュアルにはその目的によっていくつか種類がある。操作マニュアル、管理者マニュアル、業務マニュアル、講習会用マニュアルといった類だ。

 システム構築の経験が浅いユーザーはこのマニュアルの区別が曖昧なまま、単に見積金額の多い少ないだけで発注するかどうか決めてしまうことがある。見積金額で決めてしまうというのは、言い方を変えると「安い」と感じた場合だ。

 例えば「システム操作マニュアル30万円」といった見積もりならば、あまり迷うことなく「丸投げ」発注してしまう。安いと思いつつも漠然と市販品ソフトウエアに付属しているような完成度のものを思い浮かべてしまったりする。

 ところがベンダーからすれば、30万円で作成できるマニュアルといったら画面のハードコピーに簡単な説明や注釈を加えたな講習会マニュアルである。このギャップでユーザーとベンダーが少々もめるのは、プロジェクト後半の風物詩みたいなものでもあるが、最近ではさらにややこしいことになっている。その原因は動画の普及である。

 YouTubeやSNSの普及で何かを調べたり学んだりする際のファーストチョイスが動画になるのが急速に進んでいる。マニュアルや説明書を丹念に読むよりも、動画をさくっと閲覧したほうがわかりやすいことが多い。特に操作系の説明に関しては動画の「見える」という効果はとても大きい。

 だからプライベートでYouTubeなどの動画に慣れ親しんでいるユーザーは「紙のマニュアルではなくて、動画のマニュアルがいい」ということになる。それでは操作マニュアルは動画で作ろうとなるかと言えば話はそう簡単ではない。

 今現在でいえば多くのベンダーに動画でのマニュアル作成のノウハウがないからである。

 大手や中堅ベンダーなら会社のある部門で動画編集用のハードウエアやソフトウエアを保有していることはあるだろう。しかし、顧客のシステム構築を直接担う部門がそれら機材やソフトウエアを保有し、活用していることはほとんどないのではないか。