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 当コラムは主に発注者であるユーザー企業に対してベンダーへ「丸投げ」してはいかんぜよ、というのが大きなテーマである。しかし、実際にコンサルタントの仕事でさまざまな案件に関わっていると、「これは国レベルで標準化してむしろ『丸投げ』できるようにしたらどうか」と感じることがある。

 その1つが秘密保持契約書である。ユーザー企業がSIベンダーやコンサルティング会社にシステムに関するさまざまな業務を依頼する際、秘密保持契約書の締結は必須である。この秘密保持契約書の締結がなかなかすんなりいかないのである。

 一例を挙げよう。システム調達においてRFP(提案依頼書)を複数のベンダーに提示するに当たって、それぞれのベンダーと個別に秘密保持契約書を結ぶことになる。ところが、ユーザー側で用意した秘密保持契約書の案がすべてのベンダーにそのまま受け入れられることはほとんどない。4~5社と秘密保持契約書を結ぼうとすれば3社前後は注文をつけてくる。例えば以下のような点だ。

・秘密保持の義務および目的外の使用の禁止期間が5年となっているが3年にできないか。
・損害賠償金額に関して「契約金額の総額を上限として」は契約前の時点だから契約金額が不明なので、勘弁してほしい。
・第X条のY項の表記は「aaa」ではなく「bbb」に修正してほしい。
・そちらのフォーマットだと社内審査に数週間必要になるので、当社フォーマットで結びたい。

 これはユーザー企業にとって非常に煩わしい。この対応で数日どころか数週間余計にスケジュールを消費してしまうことも珍しくない。また、仮にベンダー4社のうち3社が修正やフォーマット変更を希望して、それに個別に応えると1つの調達案件なのにオリジナルも含めて4種類の異なる内容の秘密保持契約書が発生することになる。

 ベンダー4社がすべて共通の修正依頼をしてきたのであれば、それは元の秘密保持契約書に瑕疵(かし)があった可能性が高い。しかし、ほとんどの場合そうではなく、ベンダーによって要望する部分が違うのである。暴言批判を覚悟で言うならば各ベンダーの法務部門や顧問弁護士の「趣味の世界」で指摘しているのではないかと思うようなものさえある。

 秘密保持契約書の本来の目的はユーザーとベンダーの双方がお互いの秘密情報を適切に扱い、漏えいの防止を約束することにある。それならば、重箱の隅をつつくような文言修正で時間と労力を費やすより、標準化されたフォーマットで個別の注文をすることなく一発で締結できるようにすべきではないか。