ニュース記事をあれこれ眺めていたら目に飛び込んできた見出しがあった。「判断『丸投げ』自治体混乱」(2022年8月27日読売新聞)というものだ。
当コラムを執筆している筆者は、「丸投げ」という言葉に条件反射的に反応してしまう。記事は新型コロナウイルスの感染者の届け出に関するもので、全数把握をやめて、重症化リスクの高い患者に限定して届け出るという。しかし、その導入判断を都道府県に任せたことにより、自治体側に混乱が発生しているといった内容だ。
この高リスク患者に限った発生届の導入を検討していた知事たちが、全国一律導入ではなく都道府県の判断になったことに反発し、導入の見合わせの考えを示した。知事たちの論調は「矛盾点にあふれた制度と言わざるを得ない」「都道府県に丸投げだ。何を考えているんだと思う」となかなかに厳しい。この件に関して感じたのは、どっちもどっちで丸投げ合戦ではないかということだ。国と都道府県というより岸田首相と知事が互いに「決める責任」を丸投げし合っているようにしか見えないのである。
首相はまずは様子見で判断を知事に投げる。一律導入を期待していた知事は自分が決めたくないものだから、丸投げだと大騒ぎする。ふだんは地方自治の重要性を声高に訴えるお歴々がいざとなると腰が引けているのだ。その反応を見てか、首相は前言をあっさり翻して「もとより全国一律で導入することを基本として考えている」と述べたそうだ。
これによりどうやら9月中旬から全国一律に届け出対象が変更されるようだが、その変更に伴う作業が発生する。その作業は厚生労働省→都道府県→市町村→保健所→医療機関といったような階層で丸投げされていくのであろう。報告件数は減るので業務が楽になる部分はもちろんあるだろうが、作業だけでなく責任も丸投げされるのであれば、また新たな困難事が現場で出てくるだろうなと危惧する。