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 ユーザー企業のIT調達を支援していると、クラウド+サブスクリプションのITサービスが一気に勢力を拡大し、主役になってきたと感じる。もちろんサブスク型のITサービスは以前から存在したが、DX推進の機運とともにその市場拡大が加速したといえよう。

 DXを実現する上では「所有する」より「利用する」ほうが身軽で、変化への対応も素早くできるのは確かだ。不動産の世界に例えれば、サブスク型のITサービスは賃貸型、オンプレミスは自社ビル型といえよう。

 以前は大企業や成功した企業は自社ビルを建てることがステータスであったが、現在では不動産デベロッパーが所有するオフィスビルを借りるのが基本だ。賃貸であれば、事業環境の変化に対応して、拡張したり引っ越したりが容易である。サブスク型のITサービスにも同様のメリットがある。

 だが、調達の現場は理想論ばかりではない。これまでのシステム導入に関する商習慣とサブスク型ならではの契約や支払いの方法にギャップがあり、悩みを抱える調達担当者は少なくない。

悩ましいのは「前払い+年払い」

 サブスク型の契約・支払い条件はサービスによって多様ではあるが、ユーザーの決裁者にとって最も悩ましいのは「前払い+年払い」のパターンである。年間契約の料金を前払いで支払う必要がある。サブスク型サービスの雄、Salesforce(セールスフォース)がこのパターンの代表であろう。少人数で試行的に始めるのであれば、ほとんど問題はない。しかし、ユーザー数が数百人以上で、導入支援ベンダーも入れて半年以上かけて導入するような新規ユーザーの場合、「前払い+年払い」は相当の覚悟が求められる。

 まだ何も実現していないキックオフの前に全ユーザーの1年分のサブスク費用を前払いする必要があるからだ。これまでの一般的なシステム構築では開発期間中はソフトウエアパッケージのライセンス数は開発に必要な最小限に抑え、本番稼働前後のタイミングで全ユーザーのライセンス数に切り替えるというやり方が多かった。

 そうしたやり方を常識と考えていると「前払い+年払い」のインパクトは大きい。さらにディスカウント条件として「複数年契約すると大幅値引き」などの条件を持ち出されると値引きの魅力と失敗したときの恐怖との板挟みになる。初期導入が成功し、システムが回り出せば2年目以降は抵抗なく「前払い+年払い」を受け入れることができるだろう。

 しかし、初回はきつい。