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 官公庁や独立行政法人のシステム調達は一般競争入札により行われるが、新規参入者にはハードルがとてつもなく高い。それは過去に官公庁のシステムに携わった実績を問われ、それが入札の採点に大きく影響するからである。

 過去に実績がないので入札に負ける→実績を作ることができない→別の入札でも実績なしで負ける、の堂々巡りになり、いつまでたっても実績を作ることなどできない。だから過去実績が豊富にある大手や既存契約のベンダーが落札することになり、実力はあっても自社実績のない会社はその大手の下請けとして入るしかない。

 こうして業界の宿痾(しゅくあ)とも必要悪ともいわれる下請け構造が出来上がるのである。入札担当者の言い分としては「大切な国民の血税を使ってシステム構築をするのだから、慎重を期して経験と実績が豊富なベンダーを高く評価するのは当たり前だ」ということになろう。

 それにはもちろん一理ある。しかし、官公庁系のシステム構築の失敗や無駄遣いの事例は年金システムや特許庁基幹システムなど枚挙にいとまがない。そしてその失敗による損失の責任を誰も負わない。そもそも「実績重視」は調達担当者が真剣に考え抜いた評価項目ではなく、単に前例を踏襲しているだけの場合がほとんどだろう。また失敗した時に責任を「丸投げ」できる格好の言い訳にもなる。減点主義の組織の論理は「実績のない新規に発注して失敗したら大問題だが、実績豊富な大手が失敗したらそれは仕方がない」だからだ。

 民間企業においても実績は重視される。特に業界経験を問うことが多い。それはベンダーがその業界の業務知識を持っているかどうかを知りたいがためであり、それ自体はごく当たり前の要求である。業界経験豊富なベンダーであれば、いちいち業務や業界常識を教えなくて済むし、同業他社の先進的な事例なども紹介してもらえるかもしれない。