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 ペーパーレスをテーマとしたWebセミナーで基調講演をしてほしいという依頼を日経クロステック Activeから受けたときのことだ。引き受けるにあたり、今どきのペーパーレスに関するソリューションを調べてみようとネット検索すると、あるはあるは。テレワークの普及やインボイス制度および電子帳簿保存法への対応もあり、ペーパーレスの様々な製品やサービスが雨後のたけのこのごとくである。さらにペーパーレスは「DX(デジタルトランスフォーメーション)の最初の一歩である」といったキャッチコピーも目立つ。

 「紙の文書を電子化する」という課題は決して新しいものではない。ずっと以前からある企業の課題であり、IT導入の目的の1つとされてきた。なのでDXブームにちゃっかり便乗しているな、と感じる昔からある製品もないわけではない。

 それにしても製品やサービスが多くて1つひとつ調べていたら時間が足りないので、コンサルタント仲間に助けを求めることにした。ITコンサルタントの岡室俊之氏は、各種ソフトウエア、ツール、サービスにとても詳しい。常に新しい情報を持っている。また中小企業のDXに関しても一家言を持っていて、情報交換の相手として頼もしい存在だ。

 いろいろと情報や見解をもらい、議論をしていくなかで岡室氏から次の言葉があった。「DXで最も大事なのはX=変革を行うことですが、一方でD=デジタルを知らないと無駄足を踏んだりしますよね」。

 岡室氏いわく、世の中にはすでに多くのD=デジタルの製品やサービスが出ており、特に中小企業がやろうと考えるDXで使えるものはすでにあったりする。だからどんな製品やサービスがあるかを知っていればそれらを活用して、すぐに取り組むことができるかもしれない。反対に、知らないとすでにあるものを高いコストと労力をかけて作ろうとしたり、「ウチじゃそんなことできない」としり込みして断念したりということもあるのではないか。だからユーザー企業がDを知ることは大切である。

 この意見に関して筆者は同意する。また、筆者はこれまでセミナーなどで「Xはユーザー、Dはベンダーが仕切れ」と言ってきたので、もしかするとユーザーに誤解を与えてきたかもしれないとも感じた。もちろんユーザーはベンダーにDを「丸投げ」すればよいという意図ではない。短くインパクトのある言葉でDXを伝えるための、ワンフレーズとして用いてきた。岡室氏の意見を聞いて、今後このワンフレーズは使い続けるとしても、前後に少しフォローの説明を加えたほうがよいなと反省した。