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 先日、録音禁止で有名な音声SNS(交流サイト)でFinTech関連のルームにお邪魔していたところ、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、東南アジアでキャッシュレス決済が伸びていることが話題となっていた。筆者も、モバイル決済アプリの普及や銀行の積極的なプロモーションの結果、“Unbanked”地帯として有名だった東南アジアで急速に現金離れが起きていることは把握していた。

 とはいえ、それはあくまで過去3~4年のトレンドであり、各種調査リポートを見ても2020年春以降の新型コロナウイルス流行の影響がどの程度あったかまでは確証が持てなかった。その後さらに調べたところ、このキャッシュレス化のペースが驚くべきスピードで進んでいることを把握できた。

 例えば筆者は2017年にベトナムのホーチミン市を訪問している。その際、ほとんどの支払いは現金払いで、クレジットカードが使えたのはホテルと一部高級レストラン、空港の制限エリア内での支払いだけだった。しかも空港の制限エリアの支払いは現地通貨の「ドン」ではなく米ドル建ての決済となっていた。

 そんなベトナムだが、米カード大手のVisa(ビザ)が2020年8月に出したデータによれば、クレジットカードやデビットカードを使った同国での非接触決済の回数は、2019年前半と2020年前半との比較で500%伸びているという。回数そのものが不明のため規模感が分からないが、少なくとも現金天国どころかカード決済不毛地帯だったベトナムにおいて、カード利用と読み取り機の非接触対応が進んでいるということだ。新型コロナ禍で移動が制限されている今、現地調査は難しいものの、3~4年で現地事情がガラリと変わっている可能性が高い。

ベトナムのホーチミン市を行き交う大量のバイク
ベトナムのホーチミン市を行き交う大量のバイク
(撮影:鈴木 淳也)
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ベトナムにおけるクレジット(デビット)カードの非接触決済回数の変化
ベトナムにおけるクレジット(デビット)カードの非接触決済回数の変化
(出所:Visa)
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2018年~19年の1年間にユーザー数6.7倍

 東南アジアにおけるキャッシュレス決済は「クレジット(デビット)カード」「モバイルアプリ決済」の両軸で、特に後者が大きいといわれる。経済全体に対するインパクトを示すマクロデータは手元にないが、成長率関連の数値を見ると後者の勢いが分かる。

 インドネシアでモバイルウォレットを展開するOVO(オーフォ)が2019年3月に出したデータで、月間アクティブユーザー数が2018年との比較で6.7倍、チャージ金額で5倍の伸びを見せているという。仮に2019年から2020年までを通して同程度の成長を達成したとすれば、新型コロナ禍による利用拡大もあってさらに成長ペースが加速していてもおかしくない。スタートの数値が低かったとしても、「街でキャッシュレス決済を頻繁に見かける」程度の水準に達している可能性がある。