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 ここ最近話題になっているのが、インドでの暗号資産(仮想通貨)に関する規制だ。同国では過去数年にわたって仮想通貨に対する規制強化に向けた動きが活発化しているが、2021年1月にはインド政府が中央銀行のデジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)発行に向けた取り組みを発表するのに合わせ、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)など、プライベートで発行されるものを含む全ての仮想通貨を規制対象とする話が持ち上がっている。そして3月15日付のロイター通信の報道によれば、インド政府は仮想通貨の保有そのものの規制にまで踏み込み、マイナー(採掘者)やトレーダーなど違反者には罰則をもって臨む方向だという。

 こうした仮想通貨規制では中国の事例が知られている。同国ではビットコインなど仮想通貨の価格が上昇したことを受けてマイニング(採掘)競争が激化。大量の資産が仮想通貨に流れ込んだことを受け、マイニングの禁止や取引所の閉鎖を実施している。一方、同国ではいまだにマイニング行為や闇の取引所が存在しているともいわれ、実質的には表立った行動が縮小されただけの状態と思われる。そうしたなか、インドの保有規制はさらに踏み込んだ処置ともいえ、各国政府が対応に追われている状況だ。

 今回は「なぜ各国が仮想通貨に警戒感を持つのか」という話と、その先にあるCBDC、そして仮想通貨による決済の話題に触れたい。

各国がCBDCに向けた動きを加速する理由

 本題に入る前に、仮想通貨の定義についておさらいしておこう。仮想通貨の呼称を巡っては、金融庁が2018年末に「暗号資産(Crypto Assets)」としている。当時の国際決済銀行(BIS)や各国の中央銀行などが「通貨」という名称の代わりに「Digital Assets」や「Crypto Assets」の表記で申し合わせ始めたのを受けたものだ。

 本稿では「仮想通貨」で表記を統一するが、日本円や米ドルなどの法定通貨にあるような「通貨」に該当する性格を必ずしも全て持ち合わせているとは限らない点に注意したい。あくまで、暗号技術を用いてその価値が担保されている「資産」にすぎない。また交換によって初めてその金銭的価値が生まれるため、「資産」といえどその価値は担保されない。

 各国政府はなぜ仮想通貨に警戒感を持つのか。それは、単純な「交換可能な資産」という枠を越えて仮想通貨の利用が広がることで、その全容を各国政府が把握しづらくなったり、あるいは各国の既存の金融システムを書き換えられたりしてしまう可能性があるからだ。

仮想通貨の存在は、政府や中央銀行が発行・管理する通貨を前提とした金融システムを揺るがす可能性も秘めている。写真は米国ニューヨークの金融街の中心にあるフェデラルホール
仮想通貨の存在は、政府や中央銀行が発行・管理する通貨を前提とした金融システムを揺るがす可能性も秘めている。写真は米国ニューヨークの金融街の中心にあるフェデラルホール
(撮影:鈴木 淳也)
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 既存の金融システムの多くは銀行を介して通貨をやり取りする。そのため、マネーロンダリングなどの観点から各国政府が銀行側に監視義務を与えることで、全体の流れを把握できる。日本の場合、近年では銀行サービスの穴を埋めるべく資金移動業が発達しつつあるが、これも同様の規制で対処できる。

 そうした監視システムで残るのは現金でやり取りされる部分だ。新興国などを中心にここが汚職や不正の温床になるケースがみられる。中国やインドのように経済規模や抱える人口の比較的大きい国の場合、こうしたアンダーグラウンドな金融取引もまたそれなりの規模となるため、政府は不正対策に追われることになる。