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 ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁が話題になっている。ロシアの航空会社の空域飛行禁止やロシアからの船の寄港禁止、直接的な制裁ではないがロシアに進出している外資系企業の(リスクを見越した)撤退などにより様々な影響が出ている。

 これらの制裁のなかでも特に強力な切り札として繰り出されたのが、ロシア系金融機関をSWIFTから排除する措置と、海外資産の凍結だ。こうした金融制裁は「もろ刃の剣」となり得るものだが威力も大きく、それだけロシア経済にダメージを与えることで侵攻への対抗とする制裁参加国の意志が含まれている。

 切り札の1つである海外資産の凍結は独裁者や犯罪者など特定個人をターゲットに適用されるケースが多いが、今回はロシア中央銀行の海外資産を凍結の対象としており、少し意味合いが違ってくる。中央銀行が国外の銀行に外貨準備として保持している資産を凍結することで外貨が不足し、外貨建てによる支払いが困難になる。

 例えばロシア国債は2022年3月中旬以降に利払いや償還期限が続々と到来することになるが、制裁前であれば問題なかった利払いも限られた外貨資産でやりくりしなければならず、短期的なダメージが大きい。今後、通貨ルーブルの暴落に伴う通貨防衛を行おうにも外貨準備が不足し、インフレやさらなる暴落を防ぐことが難しくなる。

 もう1つの切り札であるSWIFTからのロシア系金融機関の排除が、今回の記事のメインテーマだ。SWIFTとは「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication(国際銀行間通信協会)」の略で、1973年にベルギーで設立された銀行間の国際金融取引を仲介する協同組合のことだ。国境を越えたクロスボーダー送金のうち、SWIFTのネットワークを経由するトランザクション量は実に全体の5~6割に達するといわれ、事実上国際送金における標準的な仕組みとなっている。200以上の国や地域を対象に、1万1000以上の金融機関が相互接続されている。

 一連の対ロシア制裁では3月下旬現在、事業規模で同国2番手の銀行であるVTBをはじめ、7つの銀行がブラックリストに登録されてSWIFTのネットワークから除外されており、これら銀行を経由したSWIFT送金ができない状態になっている。これらの銀行をターゲットにした送金を遮断することでロシアと諸外国との貿易、対ロシア投資などを困難にし、ロシア経済にダメージを与えていくのが制裁の狙いというわけだ。

 一方で、最大手のSberbank(ズベルバンク)や3位のGazprombank(ガスプロムバンク)は制裁対象に含まれていない。その理由としては、ロシアからパイプライン経由で天然ガスを輸入しているドイツの送金ルートを確保するために配慮したといわれる。つまり完全に送金ルートが断たれたわけではないのだが、ここで「なぜSWIFTが制裁手段として有効であり、SWIFTに代わるクロスボーダー送金の手段がほとんどないのか」という点から整理したい。

なぜSWIFTに代わる国際送金手段は限られるのか(画像を一部加工しています)
なぜSWIFTに代わる国際送金手段は限られるのか(画像を一部加工しています)
(撮影:鈴木 淳也)
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