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 先日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のトピックを調べるために様々な資料を漁っていたところ、現在実証実験レベルで進められている各国のCBDCプロジェクトにおいて、「オフライン決済」に関する話題に触れられていることに気が付いた。

 例えば米国では、世界最大の基軸通貨である米ドルを抱えながらも、中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)はCBDCへの取り組みにそれほど積極的ではなかった。だが、2020年夏にはボストン連銀とマサチューセッツ工科大学(MIT)の共同プロジェクトである「Project Hamilton」のほか、「TechLab」というCBDCの研究プロジェクトを発足させている。そして2022年3月にはバイデン米大統領がCBDCを含むデジタル資産の研究開発に関わる大統領令に署名したことが伝わっており、経済大国では中国に続く形で模索がスタートした。

 このうちProject Hamiltonでは2段階のフェーズでプロジェクトを推進しており、同プロジェクトのホワイトペーパーでフェーズ2の概要を説明している。

Project Hamiltonのイメージ画像
Project Hamiltonのイメージ画像
(出所:ボストン連銀)
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Project Hamiltonのホワイトペーパーにおけるフェーズ2の概要解説。赤枠の部分にオフライン決済(Offline Payments)と記載されている
Project Hamiltonのホワイトペーパーにおけるフェーズ2の概要解説。赤枠の部分にオフライン決済(Offline Payments)と記載されている
(出所:ボストン連銀)
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 ホワイトペーパーに記載されたフェーズ2の概要のうち「監査性(Auditability)」「プログラム性(Programmability)」「スマートコントラクト(Smart Contracts)」といった要素は、日銀を含む他の中央銀行のCBDCプロジェクトでも将来フェーズの検証内容に含めている。このホワイトペーパーの中で注目したいのが「オフライン決済(Offline Payments)」という記述があることだ。

 一般に「オフライン決済」という言葉は2種類の意味で使われる。1つは店舗での対面決済だ。インターネットなどでの決済を「オンライン決済」と呼ぶことの対比として使われる。もう1つは、決済を処理するセンターなどとの通信なしで完了する決済を意味する。本記事で取り上げるオフライン決済は後者の意味だ。

 例えばインターネットが通じない、あるいは通信しにくい環境であったり、あるいは停電などで電源がなかったりする環境でも決済が完了する仕組みだ。2018年9月の北海道胆振東部地震では、北海道全域で停電が発生して決済システムが機能しないトラブルが話題となったが、例えばそういった環境でも使える仕組みがオフライン決済ということになる。

 つまり、現金の利点である「有効な硬貨や紙幣さえあれば受け取って買い物に使える」という利便性をデジタル環境でも実現しようというものだ。自然災害大国日本において考慮すべき重要なトピックであり、日本がCBDCを導入する段階においても、当然考慮すべきものだ。