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 ほんの最近まで50~100年単位で大きな変化がなく、昔からの大手企業がそのまま現代の市場で高いシェアを握っている――。そういわれる銀行業界だが、最近は新たに銀行免許を取得して各国の市場に参入する企業が増えている。そうした企業は比較的小規模で、かつニッチな市場を狙いつつも、市場のユーザーのニーズを確実につかみ始めている。フルサービスを提供する既存の大手銀行が成長戦略で苦しむのを尻目に、そうした新興企業が旋風を巻き起こしている。

 これらの新興企業は「Challenger Bank(チャレンジャーバンク)」などの名称で呼ばれ、英国では過去10年ほどで10近いチャレンジャーバンクが誕生したことが話題になっている。筆者はよく参加するアジア各地の金融カンファレンスでも、香港やオーストラリアなどの事例としてそうしたチャレンジャーバンクが紹介される例が増えており、世界的な流れになっていると感じる。

レボリュート(Revolut)のWebサイト
レボリュート(Revolut)のWebサイト
(出所:Revolut)
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 今回取り上げる「レボリュート(Revolut)」もそうしたチャレンジャーバンクの1社だ。2015年7月にNikolay Storonsky氏とVladyslav Yatsenko氏の2人が英国ロンドンを拠点に創業し、現在では英国だけでなく欧州、オーストラリア、米国、シンガポールに拠点を広げている。2019年後半からはカナダでベータテストを実施している。現在は欧州を中心に全世界で2000人の従業員を抱え、ユーザー数は2020年4月20日時点で1200万人の大台に達した。2019年夏ごろはまだ600~700万程度の水準だったが、わずか半年強で倍増している。

 同サービスは2019年末に日本でも数百人程度の比較的小規模なベータ版の提供を始めており、近く正式サービスへと移行する予定という。今回は新時代の銀行がスマートフォンなどの新技術や人々の行動の変化というトレンドを受けて、どのように市場に受け入れられていったのかを紹介したい。

既存銀行とは異なる事業モデル

 チャレンジャーバンクの特徴の1つとして、既存の銀行とは異なる事業モデルを採用している点が挙げられる。特定のサービスに強みを持っていたり、従来の銀行が積極的に開拓してこなかった顧客層を広く取り込んだりといったものだ。また、例えば個人向けなのに支店網やATM(現金自動預け払い機)網を持たず、インターネットバンキングに特化して運営コストを圧縮するなど、既存の銀行のようにフルサービスを提供しないといった例もある。こうしたビジネスモデルの違いが新しいサービスを生み出す余力となり、金融サービスの恩恵をより広い層へと広げつつある。

Revolut共同創業者のVladyslav Yatsenko氏(左)とNikolay Storonsky氏
Revolut共同創業者のVladyslav Yatsenko氏(左)とNikolay Storonsky氏
(出所:Revolut)
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