全3914文字
PR

 本連載では新型コロナウイルス禍における米小売業界の最新事情について、「ECシフト」や「従来型の大手小売りの衰退」の2つのトレンドを紹介した。これらと並び、現在最も熱い戦いが繰り広げられているのがフードデリバリー(料理宅配)業界だ。

今、海外ではフードデリバリー各社がし烈なシェア争いを繰り広げている
今、海外ではフードデリバリー各社がし烈なシェア争いを繰り広げている
(撮影:鈴木 淳也)
[画像のクリックで拡大表示]

 フードデリバリーサービス提供会社の代表例が、配車サービスの先駆者として知られる米Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)だ。同社が2020年8月6日(米国時間)に発表した2020年第2四半期(4~6月期)決算では、Uberブランドで展開される配車サービス取扱高が前年同期比で75%減と下落しているのに対し、Uber Eatsなどのフードデリバリー事業では106%増と大幅な伸長を見せている。

Uber Eats、事業好調もシェア獲得では苦戦

 フードデリバリー業界を全米規模で見ると、急成長中の業界でし烈なシェア争いと買収合戦が繰り広げられている。Uberはフードデリバリー業界の競合に当たる米Postmates(ポストメイツ)を2020年7月に買収するなど、業界再編が進みつつある。調査会社の出す統計によって市場シェアに差があるが、例えば米CNBCが紹介している米Edison Software(エディソンソフトウエア)の「Edison Trends」のデータによれば、米国でのシェアトップは米DoorDash(ドアダッシュ)で約45%、それにUber Eatsの約30%、米Grubhub(グラブハブ)の約20%、Postmatesなどが続く。

 他のデータでもDoorDashは約半数のシェアを握りトップの座を揺るぎなくしており、Uber EatsとGrubhubが2位争いをしていることが多いようだ。Uber EatsはPostmatesの買収により、8月現在ではGrubhubをやや引き離したと考えるのが妥当だろう。一方のGrubhubは6月、欧州でフードデリバリー事業を展開しているオランダのJust Eat Takeaway.com(ジャスト・イート・テイクアウェー・ドットコム)の傘下に入ることで合意した。Grubhubを巡っては、Uberならびに独Delivery Hero(デリバリーヒーロー)も買収提案を行っていたことが知られている。

米ロサンゼルス空港そばの格安ホテルに泊まったところ、ホテル内に食堂がない代わりに各部屋にはUber Eats利用を促すカードが立てられていた
米ロサンゼルス空港そばの格安ホテルに泊まったところ、ホテル内に食堂がない代わりに各部屋にはUber Eats利用を促すカードが立てられていた
(撮影:鈴木 淳也)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型コロナウイルスの感染拡大は全米でも続いており、カリフォルニア州のように再ロックダウンに突入するエリアも出てきている。多くの飲食店では店内での食事提供が禁止されている。郊外型のレストランであればテラスや路上での飲食スペースなど屋外に限ってイートイン営業を続行したり、ドライブスルーやカーブサイドピックアップで料理を提供したりできている。

 一方で、ニューヨークやサンフランシスコなど特に密集した都市部ではそうした対応もままならず、また通勤客がいなくなったことから食事需要自体が激減。テークアウトやデリバリーに頼らざるを得ない状況に追い込まれている。外出も制限される中、少しでも食事を手軽に楽しみたいという人々のニーズに応えるべく、フードデリバリー業界は急成長を続けている。

以前は当たり前だったレストランでのおいしい食事が、今では持ち帰りかデリバリーでしか楽しめなくなっている
以前は当たり前だったレストランでのおいしい食事が、今では持ち帰りかデリバリーでしか楽しめなくなっている
(撮影:鈴木 淳也)
[画像のクリックで拡大表示]