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 スマートフォン「iPhone」をはじめとする米Apple(アップル)のスマートデバイス向け最新ソフトウエア「iOS 14」が米国時間2020年9月16日(日本時間9月17日)に正式リリースされた。

 iOS 14を巡っては、開発者向けの最終版であるGM(Golden Master)の配布が開始されたのが9月15日であり、一般向けリリースまでにほとんど時間がなかったことから、iOS 14対応が間に合わなかったアプリが続出したことが問題になった。とはいえ、新型iPhoneがリリースされる10月までにはその問題の多くが収束していくだろう。

 良い意味でも悪い意味でも話題となったiOS 14だが、決済とデジタルIDインフラという視点で見ると面白い機能が幾つか追加されている。すでに2020年6月の「WWDC2020」でも公開されているものが中心だが、ソフトウエアの正式リリースと合わせて振り返ってみたい。

「決済」の枠を超えて進化するApple Pay

 筆者が以前に執筆したWWDC 2020関連のコラムで、個人的にiOS 14で注目している新機能が「Car Key」と「App Clips」の2つだと書いた。Car KeyはiPhone内のセキュア領域(Secure Element:SE)に“鍵”の情報を格納しておくことで、あとはiPhoneのNFC機能を使うことで物理的な“鍵”として機能するというものだ。車の扉にiPhoneをかざせばドアを解錠でき、車内のダッシュボードに置けばエンジン始動のためのスターターとして機能する。

 もともとiPhoneではBluetoothとアプリを組み合わせて似たような機能を実装していた例があるが、NFCやSEがサードパーティーに事実上開放されていないiPhoneにおいて、Androidスマートフォンと同様に利用できるようになった意義は大きい。

WWDC 2020で発表されたiOS 14新機能の1つ「Car Key」
WWDC 2020で発表されたiOS 14新機能の1つ「Car Key」
(出所:Apple)
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 2010年代前半、SEの管理権限を誰が握るのかという論争が盛んに行われていた。最終的に、SIMカードを提供する携帯キャリアではなく、端末メーカーであり、かつプラットフォーマーでもあるAppleが「Apple Pay」をリリースすることで論争に一定の結論をみた。Apple PayではSEとNFCに関する全てのアクセスをAppleが管理し、後に「タグの読み込み」などNFC機能の一部をサードパーティー製アプリにも開放したものの、SEに関しては依然として同社の管理下にある。

 この仕組みは端末移行などの面でメリットがある半面、独自の決済サービスや今回のCar Keyのような“鍵”、そしてスマートカードなどのID認証に関する仕組みの実装をサードパーティーが自由に行えず、この点が事業者にとっての不満だった。米ニュースサイトのBloomberg(ブルームバーグ)などによれば、欧州連合(EU)では域内の事業者らの声を受け、このSEとNFCの機能開放をAppleに課すための新しいルール作りに乗り出したという。スマートフォンを使ったモバイルウォレットの仕組みは、日本国外ではApple Payをきっかけに普及が始まったが、昨今はさらに新たなステージへと向かう動きが出ている。

 モバイルウォレットを使ったデジタルIDの最新事情については、今後の本連載の中で改めて整理していきたい。