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 2019年3月に開催された米Appleの製品発表イベントで登場した「Apple Card」。金融大手の米Goldman Sachsと組んでのクレジットカード事業進出で話題になった。だが、同年8月の発行開始から3年以上が経過するものの、米国外では現時点でまだサービスを提供していない。

 Apple Cardの最大の特徴はiPhoneとの密接な連携だ。具体的には、カードの発行からWalletアプリへのバーチャルカード登録、利用状況の確認と返済まで、全てがiPhone内の操作で完結できる。iPhoneの「お財布」化を象徴するともいえる製品であり、このあたりは競合製品と比べてもデジタル化の取り組みが進んでいる印象だ。だが、ここ最近になってApple Cardの周辺、特にGoldmanについての厳しい話題が出始めている。

Apple Cardはリアルカードの発行も可能だ。券面に番号などが印刷されない「ナンバーレス(NL)」方式は、今日ではごく普通のトレンドとなりつつあるが、その先駆けがApple Cardである
Apple Cardはリアルカードの発行も可能だ。券面に番号などが印刷されない「ナンバーレス(NL)」方式は、今日ではごく普通のトレンドとなりつつあるが、その先駆けがApple Cardである
(出所:Apple)
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 例えば米CNBCが「Goldman’s Apple Card business has a surprising subprime problem」のタイトルで2022年9月12日に報じたところによれば、米JP Morganが発表したリポートの中でGoldmanのクレジットカードローンにおける損失率は全米のカード会社(イシュアー)の中でも最悪と評価されており、「サブプライム層向けの貸し出し手を大きく上回る2.93%の水準にある」という。

 同社が提供するローンの貸し出し相手のうち4分の1以上が、信用力の目安として使われる「FICO(ファイコ)スコア」で660を下回っており、ひとたび経済状況が悪化をたどればGoldmanにとってより多くの損失を招く可能性が指摘されている。

 もともと投資銀行業務を中心としていた同社だが、規制や市場情勢の変化を受けて2016年にはリテールバンク事業に参入して「Marcus by Goldman Sachs」のブランド名でコンシューマー向け銀行サービスを開始している。大手銀行としては最後発となるインターネットバンキング参入だが、その起死回生策の1つとして注目されたのが、Goldmanをイシュアーとして発行されるクレジットカード「Apple Card」だった。

 同社は他にも、米General Motorsのブランドで米大手銀のCapital Oneから発行されていたカードイシュアー事業を2020年10月に獲得して、今年2022年1月にGoldmanのライセンスを使ったMastercardブランドのカード発行を開始するなど、カード事業拡充を図っている。だがCNBCによれば、同社からは過去数年にわたってコンシューマー部門のキーパーソンが立て続けに離職しているという話も出ており、苦戦しているとの見方もある。