全4633文字
PR

 人々の買い物体験は日々進化している。物々交換が中心だった世界に流通貨幣が登場し、後に手形や銀行券のようなものが取引に利用され、その後の小切手や紙幣へとつながっている。20世紀半ばになるとクレジットカードの仕組みが登場し、オンライン取引の発展とともにリアルタイムで残高からの引き落としが可能なデビットカードの普及へとつながった。

 現在はスマートフォンなどの登場により、リアルな“財布”を持たずともスマートフォンを通して買い物が可能な仕組みも登場した。実際、筆者も含めて外出中に一度も財布を開くことなく過ごしているという人も少なからずいると思われる。そして次なる決済の世界のフロンティアと目されるのが「ハンズフリー」での支払いだ。

 現在の決済の仕組みにおいて、消費者は支払いの場面で必ず何かしらのアクションを要求される。例えばクレジットカードを読み取り機に通したり、スマートフォンをかざしたり、あるいはアプリ上で支払い操作を行ったりする必要がある。つまり、支払いに際して現金を持たなかったとしても、クレジットカードやスマートフォン端末など、何らかの物理的な“もの”を所持していなければならない。今回話題とする「バイオメトリクス決済」は、こうした物理的な何かを所持する必要なく、自身の生体情報がそのまま決済のトリガーとなる。

ハンズフリーでの買い物が可能になる「バイオメトリクス決済」
ハンズフリーでの買い物が可能になる「バイオメトリクス決済」
(出所:Amazon)
[画像のクリックで拡大表示]

Amazon Oneの利用方法

 米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)は2020年9月29日(現地時間)、「Amazon One」という新サービスを発表した。詳細は同社のDay Oneブログでも説明されているが、デバイス上空にかざされた手のひらの情報をセンサーで読み込み、これにひも付けられたクレジットカード情報で支払いが可能になる。当初、このサービスを導入するのは米ワシントン州シアトルにあるAmazon Goの2店舗(「7th & Blanchard」と「300 Boren Ave.」)になるので、正確には「Amazon Goの入退店の認証を行う仕組み」ということになる。

Amazon Goの一部店舗に導入された「Amazon One」
Amazon Goの一部店舗に導入された「Amazon One」
(出所:Amazon)
[画像のクリックで拡大表示]

 通常、Amazon Go店舗の利用には事前にAmazonアカウントを作成しておく必要がある。スマートフォンに導入したAmazon Goアプリにアカウント情報でログインすると2次元コードが表示され、これを入り口の読み取り機にかざすことで入店が可能になる。あとは店内の商品を手にとってそのまま退店することで、店内での行動を把握したAmazon Goがバーチャルカートを作成し、Amazonアカウントに登録されているクレジットカードに請求を行う。利用者はアプリを開き、ほしい商品を店内から持ち出すだけで自動的に決済が行われるため、スムーズな買い物体験が得られる。

通常のAmazon Go店舗のゲート。スマホアプリの2次元コードを読み込ませて通過する
通常のAmazon Go店舗のゲート。スマホアプリの2次元コードを読み込ませて通過する
[画像のクリックで拡大表示]