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 米国において、一時期熱狂的に盛り上がったBNPL(Buy now pay later、後払い決済)への期待が急速に冷え込みはじめた。同国の代表的プレーヤーであった米Affirm(アファーム)の株価は、本稿執筆時で2021年11月のピークから4分の1に下落している。金利上昇に伴うテクノロジーセクターの評価減もさることながら、消費者保護の規制が見え隠れしつつあることや過熱した成長期待の鎮静化、決済サービスの超新星という扱いだったものに現実的な評価がくだされつつあるのかもしれない。その変化要因を、アファームを例に見てみることとしたい。

忍び寄る当局規制の足音

 1つめは規制である。まず、BNPLとは何かをおさらいしよう。BNPLは文字通り、利用者が何らかの購入をした後に、1回ないしは数回に分けて分割払いをするタイプのサービスである。定められた支払いが間に合わなかった場合、利用者は金利を負担することにもなる。

 「BNPLは既存のクレジットカードと何が異なるのか」という質問があるが、マンスリークリア(1回払い)の場合、消費者の体験はあまり変わらない。ただし複数回の場合には金利が課されない分、負担の少ない手段といえる。

 さらに、BNPLはイシュア(カード発行会社)とアクワイアラ(加盟店管理会社)の両方を兼ねている点が、クレジットカードとは顕著に異なるポイントである。このことによって、利用者に対して異なる加盟店の商品をクロスセルしたり、加盟店側に利用者をプロモーションしたりすることが可能だ。

 加盟店に対しては、クレジットカードなどより、高い手数料を設定することが多い。そして決済手数料によって、貸し倒れから発生する損失を吸収している側面がある(対照的に、クレジットカードではリボ払いの金利などが、そのコストを吸収している)。結果、高い加盟店手数料を負担できるだけの、利益率の高いチャネルと相性が良い。事実、アファームにおいては上場時、3割弱の売り上げを、利益率も高いと思われる室内ロードバイクの米Peloton(ペロトン)経由が占めていたのが象徴的である。

 だが昨今、消費者保護上、イシュアとアクワイアラを兼ねるという特性が、普及の足かせとなってきた。米国ではアファームのほかにも、豪Afterpay(アフターペイ)やスウェーデンKlarna(クラルナ)、米PayPal(ペイパル)、米Zip(ジップ)といった大手に加えて、印One Sigma Technologiesの「Simpl」や米Upgrade(アップグレード)など、多数のニッチプレーヤーがサービスを提供している。

 結果的に消費者がサービスごとに異なるBNPLサービスを用いた結果、1カ月の負債を多重に抱えてしまう状況が発生している。当初はクレジットカードよりも返済しやすく金利も安い、少額でも使えるという訴求ができていたのが、むしろ返済スケジュールが分かりづらく、どこにいくら返すべきかが不透明という皮肉な状態を招くことになったわけだ。BNPLがとりわけ、クレジットカードはおろかデビットカードも持てないアンバンクト層に訴求してきたなかで、この問題は深刻だ。

 2021年12月16日、米国消費者金融保護局(CFPB)は5大BNPLサービスを対象に、消費者の負債蓄積や規制上の潜脱が起きていないかを懸念し、調査を指示している。CFPBは特に、割賦販売は過去から存在しているものの、BNPLが少額決済にも間口を広げ、その日常的な利用のしやすさから消費者が安易に負債を積み上げてしまう可能性に着目している。また、データを活用することで特定商品の消費へと消費者を誘導していないかも懸念事項として取り上げている。

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 BNPLは、利便性やアンバンクト問題を解決する重要なツールとしても見られてきた。しかし直近の規制当局の動きは、ある意味、BNPLが一般的な負債のツールとなったことを示すものでもある。当局の姿勢が、アグレッシブに展開されてきた成長モデルに水を差すものになるかは注目されるところだろう。