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 近年、日本には北海道、本州、四国、九州の四島に加え、雲の上にデジタルな島が出現した。リモートワークをするときには本州の自宅を後にし、日中はデジタル島の職場で過ごす。テクノロジー系の会社であれば、デジタル島で時間を過ごす割合は格段に高くなる。仕事だけではない。EC(電子商取引)で買い物をするのも、この島だ。

 デジタル島の特徴は、時の流れが速く、経済が急成長していること。「Slack」で動く会社のように意思決定の頻度が高くなるため、同じ1年間に地上よりも多くのことが決まり、お金や人が活発に動く。

 テクノロジーのトレンドも急に変化するので、過去の強みが陳腐化するスピードが速く、常に新しい方法に敏感でなくてはならない。それをストレスに感じることもあるが、過去に縛り付けられない場所として生きがいも感じやすい。

 副業や転職が日常茶飯事のようになるなかで、会社の魅力も問われる。職場の心理的な安全性や、会社の目指すミッションや文化も常に競合他社と比べられる。そうした環境のなかで、全体的には建設的で前向きな言葉が語られやすい雰囲気もある。

 デジタル島における金融の姿は、恐らくエンベデッドファイナンス(組み込み型金融)の一択だ。金融サービスのほとんどは、島における各種体験に内包されているし、支払いをするときに実際に財布を取り出すことはない。デジタル島に入った時点で、本人が識別・確認されており、それ以上の伝達をわざわざ行う必要がないからである。

 もちろん、デジタル島のなかだけでは享受できない金融サービスもあるので、その場合には日本に戻ってきて従来型の金融サービスを使うことになる。だが日々、デジタル島でのサービスは充実していく。いずれは島から出る必要もなくなるかもしれない。

 そして、何よりデジタル島と日本社会の違いといえば、個人レベルでの商売になりやすくなったことが挙げられる。会社に属さないとサービスを売ることが難しかった状態から、それぞれが自分の商店やビジネスを持ちやすくなり、スムーズに支払いを受けることも可能となってきた。いわゆるクリエイターエコノミーが出現する中で、個人が仕事によりオーナーシップを発揮でき、消費者側もより満足度の高いサービスを得る方法が広がりつつある。