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 米Mastercard(マスターカード)が6月23日、金融データサービスを扱う米Finicity(フィニシティ)を8億2500万ドルで買収すると発表した。同社の既存投資家は、業績達成次第では追加で1億6000万ドルの対価を得る権利も保有する。

 フィニシティは、米国で金融情報集約(アカウントアグリゲーション)事業を手掛けるプレーヤーだ。早くも2000年にはプロダクトをローンチしており、個人や家族、組織がより正しいお金の意思決定をできるよう、当初はWebスクレイピングによって情報を収集していた。現在はその中でも、信用判断や資産管理を可能にするソリューションを提供し、従業員はグローバルで500人規模となっている。

 同社の競合としては、後述する米Plaid(プラッド)や証券系システムインテグレーターの米Envestnet(エンベストネット)傘下にある米Yodlee(ヨドリー)が有名だ。

 プラッドは米Acorns(エイコーンズ)や米Venmo(ベンモ)といった新興FinTech企業向けにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供するサービスで支配的な立場にある。一方のヨドリーは様々な口座集約サービスを20年近く提供しており、特に証券業界向けで強みを発揮してきた。

 フィニシティの主要顧客は、米Quicken Loans(クイッケン・ローンズ)が手掛ける住宅ローン事業「Rocket Mortgage」や米Experian Boost(エクスペリアン・ブースト)の信用スコア管理などで、どちらかと言えば旧来サービス寄りで、信用評価に活用するための情報集約ツールという立ち位置で競争力を発揮してきた印象だ。

 このようにFinTech企業と金融機関をつなぐサービスは、単に複数口座の情報を集約するために存在しているだけではない。金融機関口座との連携では、ユーザー本人には偽れない信用情報や本人性を何度も確認した結果などが含まれている。そのため、融資サービスであれば初期的な与信業務、送金サービスなら本人確認業務の強化手段として利用可能だ。

 ユーザーの許諾を基に、金融機関からこれらの情報が共有されることで、外部サービスを手掛けるFinTech企業などの異業種は自ら金融機能を開発する必要がなくなる。

 いくら優秀なベンチャーでも、複数の業務を同時に一流のものに仕上げるのは難しい。情報集約サービスは「餅は餅屋」を実現し、結果として創業に係るコストを圧縮することにつながる。社会的にも大きなメリットを担っていると言える。