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 英国の金融当局は2013年以降、チャレンジャーバンクの誕生を支援してきた。チャレンジャーバンクとは、銀行免許を保有するベンチャーを指す。当局の狙いは、金融産業の競争を促すことだ。新銀行設立を促進する専門部署を設置するなど、長らく力を注いできた。

 こうした振興策もあって、これまで設立されてきた新規銀行の数は英国国内のスタートアップで30行、海外銀行に英国ライセンスを認めたものは24行に上る。とりわけ調達額で注目されてきたのが、英Starling Bank(スターリングバンク、11億ドル)、英Monzo(モンゾ、11億ドル)、英OakNorth Bank(オークノースバンク、10億ドル)、英Zopa(ゾーパ、8億ドル)、英Atom Bank(アトムバンク、7億ドル)、英Clear Bank(クリアバンク、6億ドル)といったプレーヤーたちだった(金額は「Crunchbase」による累計調達額推計、米ドル建て)。

イングランド銀行のWebサイト

 多大なチャレンジを許容する取り組みとはいえ、その対象は銀行免許である。英国政府は免許交付に対する考え方として、「黒字化に向けた道筋が明確であり、資本要件や流動性要件を満たしている」といったことを規定している。

 具体的には、初期の段階では当局と相談を前提に戦略上の転換を可能とし、資本注入への依存も許容するが、免許取得の3年後にはビジネスモデルを改良し、黒字化に向けた信頼に足る戦略を持つことを求めている。さらに5年後にはビジネスモデルを確立し、黒字化を達成、ないしは、その実現に向けた確度の高い資本政策と戦略を有していることを要請している。ただし数十の新設銀行のうち、明確に黒字化を達成できたのは数行にすぎない。

 チャレンジャーバンク群のなかでも、黒字化のスピードと財務面での強さで群を抜いているのがオークノースだ。2015年の設立後、2017年には黒字を計上している。同行の事業の柱は中小企業向け貸付であり、ミッシング・ミドル(与信を得られない中小企業)と呼ばれるセグメントに対して、王道的FinTechともいえる独自のクレジットモデルを用いた柔軟な融資を武器としている。

 2019年には「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」による4億ドル超の出資を受け入れたことで、日本でも名前が知られている。だが、これまでオークノース以外の大型プレーヤーの成長事例がなかなか見られてこなかったのが実態だ。