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 世界中でオープンバンキングの機運が高まるなか、今年に入ってアジアでも、その兆しが顕著になってきた。

 象徴的なのが、インドネシア中央銀行による「SNAP(同国におけるオープンAPI標準仕様の略称)」の制定と標準QRコード仕様の公開である。同国はもともと、2025年までに決済改革を断行する青写真を掲げており、5つの重点項目の1つとして、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)などを活用したFinTech企業と銀行との接続を目指してきた。

関連サイト: Standar Nasional Open API Pembayaran(SNAP) Indonesia Payment Systems Blueprint 2025
インドネシアにおける決済改革ビジョン
インドネシアにおける決済改革ビジョン
出所:インドネシア中央銀行のサイトより画像引用
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 インドネシアの銀行がAPIを提供することは以前から可能ではあった。ただしSNAPの制定によって、FinTech企業は多くの銀行を対象に、支払い指示やデータ参照機能を開発できることになる。

 SNAPの制定に当たっては、2020年春にコンサルテーションペーパーが公表され、同国の銀行のみならずMidtrans(ミッドトランス)やTokopedia(トコペディア)といった、同国を代表するオンライン決済やEC(電子商取引)事業者もメンバーに加えて検討が進められてきた。

 主なユースケースは、口座保有の確認や送金指示、リアルタイム残高確認、履歴確認が取り上げられ、参照系というよりは、円滑な経済取引を可能とする更新系APIを主軸に据えているようにもみえる。

 SNAPと時を同じくして発表されたQR決済仕様は、インドネシア国内だけでなく、タイのQR決済とも相互互換性を持ったものになっている。ポストコロナを見据え、両国での人の往来が再開した際に経済活性化の一助となることが期待され、インドネシア独立76周年のイベントとしても位置付けられている。