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 昨今、FinTech企業が手掛けるジャンルの1つに、ESG(環境・社会・企業統治)に関連したビジネス領域がある。とりわけ、ここ数年の資本市場・金融制度上の要請もあって普及してきたトピックとして、気候変動リスクに対応するFinTech企業への注目が日本でも広がりつつある。

 偶然ではあるが、筆者も昨年からサステナビリティーに関する業務を自社で担当するようになり、企業の社会的な責任を、守りの文脈でも攻めの文脈でも意識するようになった。その中で、従来であれば性善説的なCSR(社会的責任)活動として捉えられたであろう対象が、特に金融面での要請が本格化したことでシリアスな色彩が濃くなり、結果として経済価値を生む可能性が見え始めている。

 気候変動リスクについては、ビル・ゲイツの『地球の未来のため僕が決断したこと』(早川書房)などに詳しいが、例えば2050年に本当に温暖化ガスの排出をネットゼロにするためには、地球上で総力を挙げた排出量を削減する「努力」をするだけでは不可能だ。つまり、例えばセメントや鉄鋼などの使用量を減らしたり、再生可能エネルギーのフル活用や牛肉から培養肉へのシフト、移動そのものの抑制などだけでは足りない、ということである。

 足りない分を何で補うかといえば、さまざまなイノベーションだ。しかも、“画期的”でなければならない。新たな原子力発電技術の発明であったり、二酸化炭素(CO2)排出を伴わないセメントや鉄鋼の生産方法であったり、多岐にわたる作物の品種改良だったりといったものが挙げられる。

 金融の一分野でもあるFinTechが果たせる役割は側面支援である。やや結論じみたことを言えば、努力のコストを低下させる側面が強い。だが努力の過程を支援することで、画期的なイノベーションのチャンスを少しでも増やす役割も担うことになる。これらをより具体的に見ていこう。

気候変動対策におけるFinTechの役割

 気候変動対策におけるFinTechといっても、実際に登場するタイプは決済サービスや会計ソフト、資産運用ツール、クラウドファンディングおよび金融商品組成ツールなど、通常のFinTechサービスと基本的には変わらない。だが、その目的が異なる。

 これまでは顧客獲得や情報生産に関わるコストの低下が主眼だったが、サステナビリティーへの貢献に重心が移る点が新しい。主だったテーマとFinTechサービスの例を整理してみた。

気候変動対応に関するFinTechサービスの例
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気候変動対応に関するFinTechサービスの例
(出所:米New Energy Nexus作成資料 ”CLIMATE FINTECH” における分類を参考に筆者作成)