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 暗号資産(仮想通貨)交換業FTXトレーディングの破綻が、とにかく話題だ。11月初頭の報道に始まり、スピーディーな展開と個性的な関係者の発言、海外における巨額の被害規模、ことの発端が古典的なガバナンスとコンプライアンスの欠如だったことなどが、従来とは異なるタイプの論説を呼んでいる。

 そんな中、筆者が気になっているのが、FTX事件をとりまく「人ごと」感だ。メディアや政府、金融関係者からは「資産を失った一部の方々に同情する」という表現が聞かれる。FTXの破綻を契機とした連鎖的破綻が紙面をにぎわす一方で、そこには実経済や金融システムの安定性に対する波及がないかのような、不思議な安堵があるのではないか。

 日本国内の制度では、影響を受けるFTXジャパンの資産が200億円弱にとどまり、米国中心のFTX顧客の資産よりも保全度合いが高いことは一因であろう。また、過去に国内で複数回にわたって発生した数百億規模の流出と比べて少ないこと、当時も金融システムにおけるリスクの連鎖を生んだというよりは、ねずみ講の被害のような単発の事件として捉えられてきたことも背景にある。

 余談ではあるが、通常なら沈黙を貫くであろう事件の中心人物である元CEO(最高経営責任者)のサム・バンクマン・フリード氏自身が人ごとのようなコメントを繰り返していることも、無関係ではないかもしれない。

 FTX事件を、私たちはどのように捉えて、未来への教訓とすべきだろうか。多くの金融メディアの方法論にならって、過去の金融事件の「型」を持ち出して整理してみたい。あらかじめ断っておくと、型が多く複雑なので先に分類図を出しておく。

FTX破綻関連事象の分類
FTX破綻関連事象の分類
出所:筆者作成
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過去の4類型に照らしてFTX事件を捉える

 本件については、「リーマン型」なのか「エンロン型」なのか、という議論がよくある。

 単純化を恐れずに表現すれば、(1)リーマン型は、国家などが価値を保証しない市場において資産価格が暴落してリスクが管理できなくなった金融機関・投資家群が発生し、信用創造や連鎖的破産のリスクで実体経済に迷惑をかける、という構図である。

 一方で(2)エンロン型は、会計不正により業績を水増しあるいは資産横領が長期にわたって継続し、投資家に大規模損失を与えて迷惑をかける、といった構図だ。

 FTX事件の「人ごと」感は、(1)をさらに、(A)法定通貨領域と(B)仮想通貨領域で分けることで明確になる。