2019年11月のヤフー・LINE統合のニュース以降、「スーパーアプリ」が盛んに取り沙汰されるようになった。スーパーアプリとは、スマートフォン上から様々なミニアプリを起動し、モノやサービス・機能を手配・決済できるプラットフォームのことだ。ソフトバンクの決算資料がイメージしやすい。「PayPay」の画面上から飲食店の予約、EC(電子商取引)、お小遣いのおねだりなど、多岐にわたる機能が使える画面が共有されている。
昨今、スーパーアプリを掲げる事業者が増えてきた。しかし、実際に日本で使われるのか。例えば、米国や英国でスーパーアプリは登場しておらず、KPMGの「Super app or super disruption?」というペーパーによる説明でも、西洋と東洋で存在感が全く異なることが述べられている。実際、「Super apps」という言葉自体、あまり検索されているわけではない。スーパーアプリが世界的な潮流になるかは他の専門家の意見に委ねたいが、仮に日本最大のコミュニケーションアプリである「LINE」と、強力な加盟店ネットワークを形成した決済サービスである「PayPay」が統合すれば、巨大なエコシステムを生む潜在的プレーヤーが誕生するのは間違いない。
スーパーアプリにおいて重要なのは、いかに多様なサービス(ミニアプリ)を集めたプラットフォームにできるか、という観点だ。決済を軸にしたスーパーアプリは、支払い対象となる商品・サービスが多いだけでなく、様々な文脈を帯びた利用シーンが存在する。そのため、ミニアプリの対象も分散していく。
世界のスーパーアプリの代表格としては「Alipay」、「WeChat」、「Go-Jek」、「Grab」が挙げられる。それぞれの出発点は決済や交通分野だが、それ以外にもかゆい所に見事に手が届くサービスが数多く実装されている。そして、中国や東南アジアでは利用者側が様々な不安を抱えずに済んだり、以前とは異なる消費行動を取ることが可能になったりしている。
アマゾンの売り上げ、過半は第三者
ただ、ミニアプリは数多くあるものの、個別のカテゴリーで定番になれるのは大抵が1つのプレーヤーだけ。多くの場合キラーアプリと呼ばれ、カテゴリーそのものを定義してきた存在と言える。「食べログ」以前の飲食店の評判、「価格.com」以前の最安値の探し方、「Facebook」や「LINE」以前の同窓会の開催方法のように、「以前はどうしてたっけ」と思わせるようなサービスである。しかし、それぞれのキラーアプリ同士が協業することはなかなかない。自社を中心とするプラットフォーム化を志向するのが個別最適の観点から理にかなっており、巨大プラットフォームの形成は実に難しいと感じる。
米国には、巨大プラットフォームとして米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米セールスフォース・ドットコムなどが存在するが、彼らはアプリケーションレイヤーの非コア領域では、「全てを取りに行く」という戦略を採用しておらず、かなりのユーザー体験を外部プレーヤーに委ねている。一方で、その個人・法人がどんな人たちか、どのようなアクションを次に取りそうかといった意思決定や契約能力にかかわる部分は、自らがしっかりと押さえている構図がうかがえる。