全2758文字
PR

 今後のIT人材にとって、本当に必要な力は何か――。この問いを筆者が投げかけられたら、まず「リベラルアーツ」と答えるだろう。ここで言うリベラルアーツとは、哲学や心理学、歴史など、主に人文科学系に分類される学問を指す。

 筆者が所属するVisionalグループ(ビズリーチなどをグループ会社に持つ)では、2019年5月から「グローバル基準採用」という制度を導入した。新卒エンジニア職の採用基準をグローバルの基準に引き上げ、年収600万円以上~上限なしの能力に応じた給与体系に変更した。その評価軸の1つに「リベラルアーツを習得していること」を掲げている。

 英語が話せる人と、英語を使ってビジネスができる人は異なる。これと同じく、指示されたものを開発できる能力と、プログラミングというスキルを使ってビジネスができる能力は大きく異なる。当社は後者を備える人を「IT人材」と呼んでいるのだが、今の日本では後者を備えるエンジニアが圧倒的に不足していると感じている。それは、プログラミングとビジネスでは求められる専門性が異なるからで、技術のみを習得するだけではビジネスができるエンジニアにはなれないからだ。

サイエンスとアートの両方を学ぶ

 この専門性の違いを米国学問体系に沿って説明しよう。日本の教育では文系、理系と分かれているように、米国の大学や大学院の学位は「サイエンス」と「アート」の2種類に分けられる。サイエンスは「Things Nature Made=自然がつくりしもの」で、アートは「Things Human Made=人間がつくりしもの」のことを指す。

 一般的に、プログラミングにはサイエンス、ビジネスにはアートがよく求められる。サイエンスは定量的で法則があるもので、ルールに従うことでものごとの絶対評価を可能にする「定量思考」がベースにある。それがプログラミングの根底にある思想だ。一方、アートに分類される「歴史」や「文学」などは人がつくり上げたものであって、そこに絶対的な正解はない。ビジネスもそうだが、人を介して行われるやりとりにおいて、絶対的な価値判断はできない。