全2316文字

 世の中は新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな変局を迎えつつある。今回は、こうした状況下で求められるエンジニアの価値とは何かということに、改めて向き合ってみたいと思う。

 今や多くの企業で、事業や組織の数カ月、数年単位の延命が急務とされている。人員配置を含めて、短期的な収益を得るための事業シフトが進むこともあるだろう。厳しい状況に置かれているのは、エンジニアも例外ではない。

 しかし、悲観するばかりではない。エンジニアリングの世界においては、このカオスはむしろ前向きに捉えることもできる。「ソーシャルディスタンス」が必要な時代に力を発揮するのは、ITだ。実際にリモートワークを円滑に進めるためのツールが急成長を遂げるなど、対面で行われてきたさまざまなプロセスを回避するためのテクノロジーに改めて価値が見いだされている。ここから生まれるテクノロジーの多くは、今後のスタンダードの1つになることだろう。

 このような状況下で市場から求められるエンジニアとは、どのような人材なのだろうか。それは大きく3つに集約されると筆者は考える。エンジニアとしての技術スキルと信頼関係、そして柔軟性である。

 今後は採用枠を減らす企業が増え、今までの「超売り手市場」も少し落ち着いてくるだろう。社内においても、人員配置が見直されることも起こり得る。そこでやはり求められるのは、今までの経験で培ってきた技術スキルだろう。

 ただし、技術力さえあればよいわけではない。それが経営や事業にとっていかに必要なスキルであるのかを周囲に理解してもらえるかどうかが重要だ。そのために、周囲との信頼関係も大切になる。日々のタスクやプロジェクトを進める中で、周囲との人間関係をいかにきちんと構築しているかがものを言う。エンジニアリングの世界では見逃されがちなことだが、実はこの信頼関係こそが、自身の技術力の必要性を確固たるものにするだろう。

 そしてもう1つ重要なのが、柔軟性である。あらゆるところに通用するスキルを持っていることは、先の見えない社会の中で、自身の市場価値を維持するために非常に大切だ。

時代の潮流に乗る機敏さ、柔軟さを持とう

 これは、新型コロナ禍の状況下だけに当てはまるわけではない。筆者はここ最近のIT業界が「成長の停滞期」にあったと考えている。ITの世界は20~30年という短い期間で急成長を遂げてきたが、革新的なシステムやサービスが次々登場する時代が一度終焉(しゅうえん)を迎えつつあると感じている。スマートフォンやクラウドのような絶対的な製品やサービスは生まれにくくなり、技術も一巡した感がある。