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 米国およびシリコンバレーでも新型コロナウイルスの影響が日に日に大きくなってきている。米フェイスブック(Facebook)の年次カンファレンス「F8 Developer Conference」を皮切りに、米グーグル(Google)の「Google I/O」、テクノロジーカンファレンスの「SXSW(South By South West)」など大型イベントが続々と中止に追い込まれている。

 通販サイトのAmazon.comではマスクが売り切れになり、シリコンバレーのスーパーやドラッグストアでは手の消毒洗剤やティッシュ、使い捨て手袋などが品薄になっている。

サンフランシスコ市長の先見の明に驚く

 2020年2月25日にサンフランシスコ市長のロンドン・ブリード氏が緊急事態宣言を発令したときは、感染例が1人も発生していない段階だったこともあり、この施策を疑問視する人もいた。緊急事態宣言は「サンフランシスコ住民の新型コロナウイルスの感染例はまだ確認されていないが、世界の状況は急速に変化しており、コロナウイルス(の感染拡大)への準備を強化する必要がある」という内容だ。今となってはその先見の明に驚くばかりである。

 新型コロナによる経済的なインパクトも見過ごせない。特に打撃を受けたのはテキサス州オースティンだ。SXSWはオースティンで開催されるイベントで、毎年40万人以上の参加者が訪れるとされる。オースティンで開催されるイベントとして最大級だ。オースティンの市内数百カ所で同時開催する分散形のイベントなので、地元経済のダメージは大きいだろう。

 オースティンのスティーブ・アドラー市長は、SXSWの開催の10日前まで「現時点でSXSWの中止が安全確保につながるか、証拠はない」として開催を模索していたが、開催の1週間前に中止を発表した。リスクと経済的なインパクトを考慮したうえでのギリギリの判断だったと思われる。

 米国の金融市場では株価が乱降下を続けている。株価下落のスピードが早すぎて「サーキットブレーカー」という制度が発動され、一時的に取引が停止されたほどだ。テレビ会議システムを提供している米ズームビデオコミュニケーションズ(Zoom Video Communications)や、チャットサービスの米スラック(Slack)などは好業績で気を吐いているが、そんな企業は例外的だ。米国経済もシリコンバレーの景気も、長期的な下降局面に入りつつあるという認識が広まっている。

 西海岸では、ワシントン州シアトルやオレゴン州で感染者が見つかったことを受け、シアトルに拠点を持つ米マイクロソフト(Microsoft)やアマゾンドットコム(Amazon.com)などの企業が従業員に対していわゆる在宅勤務(Work From Home)の指示を出している。その後にシリコンバレーでも感染者が見つかりフェイスブック、米ツイッター(Twitter)、米アップル(Apple)なども続々と在宅勤務に移行している。

米マイクロソフトによる新型コロナ対策のアナウンスメント
米マイクロソフトによる新型コロナ対策のアナウンスメント
(出所:米マイクロソフト)
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マイクロソフトは「業務時間が短縮されても通常と同じ賃金を支払う」

 特にマイクロソフトの対応は喝采を浴びている。在宅勤務の指示を出すだけではなく、オフィス敷地内のカフェテリアのスタッフ、運転手、現場のサポート要員といった時給ベースのサービス提供者に対して仮に業務時間が短縮されたとしても通常と同じ賃金を支払うとした。

 マイクロソフトはこの対応のアナウンスで「こうした対策ができるのは大企業だけかもしれないが、そうできる余裕のある会社は検討することをお勧めする」としている。筆者はこのアナウンスを読んだ時に、思わず「 Cool(かっこいい)」と叫んだ。前例のない状況での対応にこそ企業の本質が現れる。