デジタル技術の活用が企業競争力を左右する時代、要となるのはソフトウエアエンジニアリングの能力だ。本質は技術のみならず、人や組織、環境、情報システムを総合して働きやすい環境を作ることにある。著名プログラマーにして技術経営に精通したBASE取締役の藤川真一氏が、ソフトウエアエンジニアリングの本質を語る。

直言、藤川真一のソフトウエア論
目次
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まだ見ぬ個人が世界を変える、2021年のインターネットを語る難しさを痛感した
2021年のインターネット業界の予測を考えてみたが、2020年に引き続き不確実性が高すぎて、よく分からないという結論に至った。よく分からないことこそがネットの魅力である一方、ネット産業に携わる一人として不確実性にどう向き合うか、悩みどころでもある。
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哲学が持てないAIは主流になってはいけない、人間がハックされないために
SNSのリコメンドや株式取引の支援などAIが活躍する場が広がるにつれ、AIをハックして結果をコントロールしようとする試みへの懸念が高まっている。ただ、AIが発展するといずれAIによって人間の行動結果がコントロールされる事態が起こりかねない。人間がAIを使いこなすには、AIにも「哲学」が必要だ。
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YouTuberの「卒業宣言」に学ぶアルゴリズムの意義、人間心理と全体最適の攻防は続く
YouTubeを卒業します――。ある著名YouTuberの宣言が話題となった。YouTubeのアルゴリズム変更がきっかけという。著名人の動画を見たいという人間心理に根ざした集客手法と、全体最適を目指してアルゴリズムで多様なコンテンツを配信する手法。開発者は両者のバランスを考える必要がある。
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東証トラブルを「明日は我が身」と思えるか、ITの社会的責任とエンジニアの役割
デジタル庁の設置やはんこ廃止など、社会のデジタル化に向けた議論が活発だ。一方で東京証券取引所のシステム障害によって取引が丸一日停止。ITが社会に与える影響の大きさを改めて見せつけた。ITが生活や社会に浸透するほど、技術経営に貢献すべきエンジニアの役割も大きくなる。
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Zoomはセキュリティーを犠牲に勝ったのか、プロダクトデザインの理想と現実
Zoomはセキュリティーを無視してUX強化に全力を投入したから一人勝ちした――。こんな意見をしばしば見かける。最初から完璧なアプリケーションを目指すのは理想だが、必ずしも価値を生むとは限らない。Zoomの戦略と開発陣の対処を追うと、Webサービスにおけるプロダクトデザインの現実解が見えてくる。
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ノーコード/ローコードでプロのエンジニアは不要に?いや、むしろ逆だ
ノーコード開発やローコード開発という言葉が流行している。ノーコードとはソースコードを書かない、ローコードは極力少ないコード量でそれぞれ目的のソフトを開発する手法を指す。今回は「ローコードによってプロのエンジニアは不要になってしまうのか」というテーマを考えてみたい。
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SEという肩書は時代遅れか、SIerとネット企業に横たわる言葉の溝を考えた
「SEって肩書どうかな?」。筆者はこれまで何度も周囲にこう聞いて、そのたびにけげんな顔をされてきた。ネット企業にSEは必要ないのか。そもそもSEの役割とは。大手SI企業や伝統的な情報システム開発企業だけではない。ネット企業や技術スタートアップにこそ、SEは必要だ。
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まさか私が技術負債に?DXに臨む管理者の苦悩
多くの企業がDX力を入れる中、「技術負債」の解消が課題になっている。つぎはぎのソースコードを重ねたシステムだけが負債とは限らない。最も見えにくくやっかいなのは、人材である。特にエンジニア組織を率いるマネジャー自身が技術負債になっていないか、常に自問自答すべきだ。
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テレワーク時代のマネジャーの使命、部下の異変を見逃さないために考え抜け
在宅勤務で従業員が顔を合わせられない状況が続いている。マネジャーはメンバーに異変はないか様々な方法で把握しなければならない。日ごろからメンバーとコミュニケーションを図りながら仮説を立て、大丈夫か大丈夫かと考え続けるのがマネジャーの使命と言える。
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テレワークNGの方針を転換、成否を握る職種の存在に気付かされた
筆者の勤めるBASEは基本的にテレワークを推奨していなかったが、新型コロナ禍に際して感染拡大防止を最優先するため方針を転換した。滞りなく回っているものの、対面時と同様の開発生産性を維持するために重要な職種の存在に、改めて気付かされた。個人の環境を変えるだけでなく、チームとして機能するようマネジャー…
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「マネジャーに上がるのはエンジニアとしての死」、こんな通説に逆らう新職が台頭
マネジャーに上がるのはエンジニアとしての死だ――。こう考え、現役にこだわるエンジニアが少なくない。しかし最近はエンジニアとしての能力を存分に生かしながら活躍できるマネジャー職が注目を集めている。変化し続けるネット業界を中心に台頭する、2つの新たなマネジャー職の実像と意義を解説する。
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DXは内製が常識なのか?素朴な疑問について考えた末にたどり着いた「本質」とは
デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたシステム開発の人員をどう手当てすべきだろうか。本業にかかわるシステム開発なのだから、社内にIT人材を抱えて自ら開発するべきか、外部に開発を発注するか。今回はDXを実践する際に必ず突き当たる疑問への、筆者なりの考えを述べたいと思う。
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ネットバブルから20年、「インターネットの時代」がようやく訪れる
インターネットバブルから20年。筆者は2020年の今になって、ようやくインターネットが個人の生活や働き方、企業のビジネス活動を変える入り口に立ったと感じている。逆に言えば今までの20年間におけるネット活用は序の口に過ぎず、本当の意味での変化を誰も目にしていないと考えている。
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Webサービスはコードの集合にあらず、ソフトウエアエンジニアリングの大誤解
ソフトウエアエンジニアリングの本質とは何でしょうか。BASEのプロダクトはネットショップの開設や運営を支援するWebサービスです。ならばWebサービスの優れた機能を実現するコードがあればよいのでしょうか。連載の第1回はソフトウエアエンジニアリングにまつわる誤解をただし、あるべき本質の姿を論じます。