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 筆者の勤めるBASEは基本的にテレワークを推奨せず、最良のプロダクトを作る上であえて対面を重視していたが、新型コロナ禍に際して感染拡大防止を最優先するため方針を転換。既に2カ月以上テレワークを続けている。プロダクト開発を含め滞りなく回っているものの、対面時と同様の開発生産性を維持するために重要な職種の存在に、改めて気付かされた。個人の環境を変えるだけでなく、チームとして機能するようマネジャーは気を配る必要がある。

 読者の皆さんと同様、筆者も新型コロナウイルスのニュースで落ち着かない日々を送っている。こういう連載を書くときには、読者の皆さんの未来のことを考え、何かを変えるための提案をするスタンスで考えるのが常だ。しかし、今は、起きていることがあまりに難解で、未来を考えるのは難しい。今回は、今広がっているテレワークにおいて起きている現象について考えてみたい。

BASE社におけるテレワーク解禁

 我々も2月から在宅勤務推奨の形でテレワークを開始しており、4月からは原則在宅勤務となり、既に2カ月たとうとしている。我々はインターネットを通じて顧客サービスを提供している会社なので、どうしても対面で仕事をせねばならない医療従事者や物流業、小売業などと比べてテレワークに向いている。だが、今回の出来事が発生する以前は、基本的にテレワークを実施していなかった。

 BASEというサービスの強みは、ネットショップ構築業務をいかに簡単に実現するかというユーザー体験にあると自負している。これを維持するためのクリエイティビティー向上や、ユーザー体験のデザイン工程におけるコミュニケーション性を重視して、原則として出社による作業を前提としていた。もちろんではあるが、テレワークでの業務参加は、メンバー自身や家族の体調が悪いなどのやむを得ない状況では、マネジャー承認によって行われていた。しかし、大規模な在宅勤務の実施は、今回が初めての経験だった。

 とはいえ、多くの社員へ既にノートPCを支給しているうえ、ノートPC持ち帰りのガイドラインを設定していた。あとは、普段会社でのみ作業していたPCのセキュリティー設定の再確認や、VPNの設定などでどうにかなるという状態ではあった。

 幸い2019年末の段階で情報システム部門の人員強化を進めていたので、「あすからのテレワーク」実施を決断した段階で、大きなトラブルなく実現することができた。次の日からは、出社人数は全体の15%程度に減った。

テレワークで起きる問題

 我々は普段からSlackでコミュニケーションを取っており、場所や時間に依存せず相互のコミュニケーションが可能な体制でいた。同じIT企業でも、営業がチャットワークで、エンジニアやデザイナーがSlackなどと分断されたコミュニケーションを許容している会社もあると聞くが、当社は若いIT企業だけあって、最適なコミュニケーションを優先し、英語インターフェースで少し分かりにくいITシステムでも、それが最適であれば当たり前のように導入を推し進めてきた。まず、テレワークで起きる問題の最たるものに、普段から何かに忖度(そんたく)している組織は、非効率が増幅されてしまうという問題があると思う。