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 イノベーションのジレンマという言葉が出てきて久しい。ITエンジニアであれば、手に職をつけて一生安泰などと言える世界ではなく、常に自分のスキル、知識をアップデートしていく必要があることは誰もが思っているはずだ。

 しかし、この考え方の奥底に、自分達のビジネスモデルや働き方は一生安泰で、表面にある技術を都合よく代替していけば一生安泰だと思っているところはないだろうか。

 この考え方は危険である。『株式投資の未来」(ジェレミー・シーゲル、瑞穂 のりこ 著、日経BP)という書籍では、歴史的に見て成長を期待されるハイテク銘柄は、後から出てきたハイテク銘柄による技術革新によって既存の立ち位置を破壊されるので長期的に存続するのが難しいことが述べられている。企業が存続し続けるのが難しいなら、従事する社員が一生安泰であるはずはない。長く存続する企業には、時代時代に合わせてその形を少しずつ変えていき、変化についていける社員だけが残っているところが多いはずだ。「うちの会社は古い」と言いたくなる老舗でも、長期的に見ると必ず変化している。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉は、ITを専門としてきた企業に留まらず様々な産業にデジタル技術が入っていき、ITが現実のビジネスに結び付く変化が起きるというものである。DXを成し遂げた企業が生き残り、そうでない企業は淘汰されることが見えているからこそ、経済産業省が音頭を取り、国として多くの企業に変革を促す危機感があるのだろう。結果としてハイテク企業の特性だった変化への圧力が、多くの産業に入り込むかもしれないということを示している。

インターネットを通じた継続的な変化の世界に身を乗り出すのがDX

 その変化の圧力を乗りこなすため参考にすべき情報がある。CTO協会が発表した「DX Criteria」である。

 同ガイドラインには2つの「DX」が述べられている。1つはもちろんデジタルトランスフォーメーションだ。もう1つのDXはDeveloper eXperience、つまり開発者の仕事のしやすさを指す。開発者の働きやすさがなぜデジタルトランスフォーメーションに関連するのかと疑問を持つ方もいるのではないだろうか。

 答えは、ちょっとしたシステムを導入して済ませる取り組みがDXの本質ではないという点に尽きる。

 デジタル技術を生かしてビジネスを変革し、企業が生き残れる状況を作る。その際、システムを継続的に維持、発展させるために必要な働き方や考え方をアップデートしないと生き残れないということが述べられている。システムの視点はもちろんのこと、マーケティングや人材、デザインなど複数の視点に基づいてアップデートしていく必要がある。さもなくば市場に受け入れられる製品を作れなかったり、事業を継続・発展できなかったり、社内の生産性が向上しなかったりするとも言える。