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 以前、芝浦工業大学のシステム工学部(現システム理工学部)の創立20周年式典に、芝浦工大卒業生として参加した。その際に聞いた基調講演によると、創立当時は日本にカタカナを使った学部名がなく、文部科学省など関係各所での承認が高い障壁になっていたという。システムという名称に反対する最大の理由は、対応する日本語がないことだった。当時、創立に関わった芝浦工大の関係者が「システム」という名前にこだわり、カタカナ学部の創設に奔走したという苦労話に、日本の慣習と時代を感じた。

 システムに対する日本語が何故存在しないのか。答えは日本の産業がかつて発展途上国だからスタートしたことと無関係ではないだろう。日本は既に存在している製品や技術を模倣し、追いつけ追い越せとより良いものを安く作るスタイルで成長してきた。何もない不確実な状態からものごとを考えて全体を組み上げていく経験が、日本全体としては定着しなかったことが考えられる。

 こう書くと「日本にはシステムエンジニアという名前の職業があるじゃないか」と思われるかもしれない。この点については当サイトでもしばしば議論されている。

 こちらの記事にある通りSE、すなわち「システムズエンジニア」はシステム工学に基づき、より幅広い問題そのものの解決を自ら行える視野を持つ役割だ。ネット上ではSE=システムエンジニアを和製英語として、システムズエンジニアとは違うものとする説も散見される。

 筆者なりの考えを述べておくと、ネットで流布するSEが誰かの期待に応えるための情報システムを開発するディレクターのような存在だとすると、システムズエンジニアはビジネスを作ることそのものや科学技術の問題解決を視野に入れた技術ディレクションの役割を期待されている。ビジネスのシーンでは事業部長やプロデューサーなどの役割と言うとわかりやすいだろうか。

ネットビジネスで求められる「SE」とは

 ネットビジネスで提供するのは情報システムではなく、サービスやコンテンツという名前のビジネスである。

 そのような組織が設立したばかりのスタートアップとして動き始めた段階では、主にWebサービスの運営に詳しい創業者がプロデューサーとして引っ張り、開発者やデザイナーと協業してプロダクトを成長させていく。その後、組織が大きくなると、創業者は経営へと役割をシフトし権限を移譲していく。具体的な役割の1つとして、システムを活用しながら安定的にサービスを運営し、ビジネスの問題解決を図る役割を求め始める。

 この役割には、技術が主軸の開発者とはまた違った特性が求められる。まして責任者ともなれば、自社のサービスで扱う技術を下地に、ビジネスの遂行を担う胆力まで問われる。つまりネットビジネスに求められるSEは、まさに「システムズエンジニア」で定義されている幅広い課題解決を担う役割のほうだ。誤解を恐れずに言えば、情報システムの開発ディレクションやプロジェクトマネジメントのスキルは、ビジネスを遂行するためのマネジメントツールにすぎない。