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 先日、YouTuberとしても活躍している「メンタリスト Daigo」氏が、10月の収入が概算で9億円を超える見込みだと発表し話題になった。上場を果たした「ほぼ日刊イトイ新聞」をはじめ、個人のアイデンティティーに支えられたコンテンツが事業を支えるトップランナーが、YouTubeの時代になって驚きの収入を上げている。

 そんなDaigo氏が先日「YouTubeを卒業します。」という動画を公開した。

 動画内で語った論点は以下のようなものだ。

  • YouTubeが自分のビジネスモデルにそぐわないアルゴリズムの変更を実施した
  • YouTuberはプラットフォームのアルゴリズムに沿った動画作りが求められている
  • 動画の見られやすさはホーム画面に出るかどうかで決まる。ホーム画面への露出を制御するアルゴリズムに合わせて動画を作るのはつらい
  • Daigo氏のビジネスモデルはニコニコ動画の有料チャンネルへの誘導であり、自分でもプラットフォームを作ったので、今後はYouTubeのアルゴリズムを意識した動画作りをやめる

 ファンを抱える商売を行う人達はEC(電子商取引)かコンテンツ配信かを問わずファンを囲い込み独占したいと考えている。一方でファンの独占は、プラットフォーム目線でいうと限られたコンテンツしか見せないことにつながる。

 コンテンツプラットフォームの目線からは、独占ではなく多様性を前提にアルゴリズムで適切なコンテンツへと誘導することが常に求められる。情報発信者側とプラットフォーム側、双方の思惑が微妙にすれ違う時に感情面のトラブルが起こりやすい。Daigo氏が指摘したYouTubeのアルゴリズム変更は、コンテンツの多様化に基づく調整ではないか。

 あまりYouTubeを見ていない人には分かりにくいかもしれないが、YouTuberはチャンネル登録をさかんに促してくる。チャンネル登録の数が増えれば、YouTubeの中での評価が上がるからだ。YouTubeの人工知能(AI)に有用なチャンネルと評価してもらうためでもあるし、チャンネル登録数が多い発信者は面白いだろうと閲覧者が判断する評価指標としても機能している。

 コンテンツの発信者はチャンネル登録数をいわゆるストックと捉え、自分の安定的な収益につながる情報として、コンテンツ表示順位を決める際に重視してほしいと考える。一方で配信をつかさどるプラットフォーム事業者の視点からは、登録者数の多いチャンネルばかりを優先すると視聴者にとって新しいコンテンツとの出会いが減り、後発の発信者が入り込む余地が少なくなる。

 ましてテレビで頻繁に見かける芸能人のYouTube参入が増えている現状では、適切なコンテンツ推薦技術を通じてロングテールとの出会いを実現するハードルは上がっているはずだ。芸能人は一般人に比べて桁違いに高い知名度を生かして、チャンネル登録数をブースト(爆発的に増加)できるからだ。知名度が明らかに不均衡な状況で、閲覧トラフィックを有名人に寄せすぎるのはプラットフォームにとって必ずしも良いことではない。かつて「Google+」で有名人をフィーチャーしすぎて視聴者の離反を招いたGoogle(グーグル)なら、痛いほど知っているのではないだろうか。