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 2020年9月末にニューヨーク証券取引所に上場したデータ解析企業のパランティア・テクノロジーの株価が、新規株式公開(IPO)時の約4倍に高騰したというニュースがあった。同社は米国防総省を顧客に抱え、秘密情報活動をビッグデータで支える事業を行っている。

 多数のクローズドなデータベースに加えて、SNSを監視するプラットフォームをビッグデータのソースとして有するのが大きな特徴とのこと。誰かがSNSに書いた動きをソーシャルグラフなどをたどって情報の関連性を探し当てるのだろうか。

 Facebookを使っていると、しばしば自動的に「おすすめの友達」を提案される。なかには「よくその人を見つけてきたね」と思えるリコメンドが出てくることがある。人間の記憶力では気が付かない関連性を見つけ出せるのが、機械であるAI(人工知能)の強みでもある。

 一方で、公開情報であるSNSをデータソースにしていると明らかになったことで、パランティアのような企業は自ら首を絞めているとも言える。このような仕組みがあることで、犯罪者集団が犯行声明などの情報をSNSに発信するのを避けてしまったり、反対にうその情報を流して誘導したりと、AIの仕組みをハックする試みが出てくるのは明白だ。さらにパランティアの好調な株価を見て多数の競合企業が実力以上に持ち上げられる恐れもある。一種のバブルのような状態が生まれてしまい、結果として人間がAIにハックされてしまいかねない。

 このような情報活動に限らず、SNSに慣れている20代は、ソーシャルメディアに出す自分の情報をコントロールしている人が多い。友達がすべからくSNSに接続し、相互の行動を見ている状況ならではの人間心理と言える。

 例えばインスタグラムへの写真をリアルタイムには投稿せず、自分の行動が推測されないように次の日以降に投稿する。見せてはいけない面や周りに誤解を与える恐れのあるツイートを出さないようにしている人も多い。

AIは哲学を持てない

 株価の短期的、中期的な変動をAIで分析しデイトレーディングのように株を売り買いするロボットプログラムが存在すると聞く。株式市場には多様な参加者がいる。純粋に会社を応援する人からチャートを見て株価変動予測をして売買する人、デイトレのように株価変動を逐一チェックして頻繁に売り買いする人まで多数存在する。おのおのの役割に応じた多様性が存在するからこそ、多様な利用法が存在するのだと考えられる。

 ところがAIは売買が成立すれば、人間よりも低コストに取引件数をスケールさせることができるので、仮にデイトレをAIで実現するロボットがメジャーになると価格支配力を持ってしまい、多様な参加者から成る株式市場本来の適切な価格を形成できなくなる恐れがある。人間がさまざまな動機で分散的に投資し、「美人投票」と言われる特性が前提にあるからこそ、それらの動きを予測するチャート分析や自動化するAIの存在意義がある。