前田建設工業が2019年2月に行ったICI総合センターICIラボの開所式で、3Dプリンターによるデモンストレーションが参加者の目を引いた。当日は高さ2.8mの喫煙所のハウジングの造形を実演。1時間で1m程度の高さを積層できる能力を披露した(写真1、図1)。
同社が建設用3Dプリンターの研究開発を本格化させたのは、16年ごろ。労働力不足への懸念や生産性向上のニーズが高まるなか、省力化や無人化を実現するキーテクノロジーとして着目し、取り組みを加速させてきた。
手始めに同社は、主に材料開発のための小型の室内用3Dプリンターを製作し、造形試験を繰り返した。そして、圧送時の流動性や印刷後の速硬性を兼ね備える「チキソトロピー性」を持つモルタル系材料の探求を始めた(写真2)。
「自力では限界があり、タイアップの形で素材メーカーの協力を仰いだ。手ごろな評価方法がなかったチキソトロピー性については、試験装置を自作せざるを得なかった。これまでの道のりで最大の難所だったといえる」。同社ICI総合センターICIラボの梶田秀幸スペシャリストは、こう振り返る。