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 前田建設工業が2019年2月に行ったICI総合センターICIラボの開所式で、3Dプリンターによるデモンストレーションが参加者の目を引いた。当日は高さ2.8mの喫煙所のハウジングの造形を実演。1時間で1m程度の高さを積層できる能力を披露した(写真1図1)。

写真1■造形範囲が拡大した実施工用3Dプリンターによる造形例。同社のICI総合センターICIラボの開所式で、高さ約2.8mの喫煙所を製作するデモンストレーションを行った。写真はその一部。中空構造の内部には補強用の鉄筋を挿入している(写真:前田建設工業)
写真1■造形範囲が拡大した実施工用3Dプリンターによる造形例。同社のICI総合センターICIラボの開所式で、高さ約2.8mの喫煙所を製作するデモンストレーションを行った。写真はその一部。中空構造の内部には補強用の鉄筋を挿入している(写真:前田建設工業)
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図1■喫煙所の完成イメージ。断面形状はイニシャルの「ICI」をイメージした(資料:前田建設工業)
図1■喫煙所の完成イメージ。断面形状はイニシャルの「ICI」をイメージした(資料:前田建設工業)
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 同社が建設用3Dプリンターの研究開発を本格化させたのは、16年ごろ。労働力不足への懸念や生産性向上のニーズが高まるなか、省力化や無人化を実現するキーテクノロジーとして着目し、取り組みを加速させてきた。

 手始めに同社は、主に材料開発のための小型の室内用3Dプリンターを製作し、造形試験を繰り返した。そして、圧送時の流動性や印刷後の速硬性を兼ね備える「チキソトロピー性」を持つモルタル系材料の探求を始めた(写真2)。

写真2■取り組みの端緒として製作した門型の室内用3Dプリンター。セメント系の材料を用いる。この実機で造形テストを繰り返し、積層造形に適した材料を開発するための課題を洗い出した。造形範囲は幅45cm×長さ60cm×高さ90cm (写真:前田建設工業)
写真2■取り組みの端緒として製作した門型の室内用3Dプリンター。セメント系の材料を用いる。この実機で造形テストを繰り返し、積層造形に適した材料を開発するための課題を洗い出した。造形範囲は幅45cm×長さ60cm×高さ90cm (写真:前田建設工業)
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 「自力では限界があり、タイアップの形で素材メーカーの協力を仰いだ。手ごろな評価方法がなかったチキソトロピー性については、試験装置を自作せざるを得なかった。これまでの道のりで最大の難所だったといえる」。同社ICI総合センターICIラボの梶田秀幸スペシャリストは、こう振り返る。