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 竹中工務店は、セメント系構造物そのものを造形するという視点とは別の考え方で、3Dプリンターを生かそうとしている。同社が着目したのは型枠だ。研究開発の端緒は、2014年に慶応義塾大学環境情報学部の田中浩也教授と共同で開発した「ArchiFAB」になる。

 ArchiFABは、樹脂(硬質塩化ビニール)を押し出して積層造形する3Dプリンターだ。高さ2.5mの三角柱のフレームとフレームに取り付けられた3つのロッド、さらに、ロッドの先端に取り付けられたエクストルーダー(樹脂を押し出す装置)などから成る。ロッドを自在に動かし、エクストルーダーの位置を調整しながら積層造形する(写真1)。

写真1■竹中工務店と慶応義塾大学の田中浩也教授が共同で開発した3Dプリンター「ArchiFAB」。中央の黒いロッドでエクストルーダーを動かしながら樹脂を押し出して積層し、型枠をつくる。最大で1辺が90cm程度の部材を製作できる(写真:竹中工務店)
写真1■竹中工務店と慶応義塾大学の田中浩也教授が共同で開発した3Dプリンター「ArchiFAB」。中央の黒いロッドでエクストルーダーを動かしながら樹脂を押し出して積層し、型枠をつくる。最大で1辺が90cm程度の部材を製作できる(写真:竹中工務店)
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 この技術を用いて同社が製作したのは、鉄筋コンクリート用の樹脂型枠だ。細かな凹凸や曲面など、複雑な形状に対応できる樹脂型枠の強みを生かし、コンクリート打設後も残存させる化粧型枠とした。

 「従来の工法では合理性やコストが重視され、柱の形状などは断面が矩形や円形といった単純形状が大半だった。自由な形状を実現できる3Dプリンターを活用すれば、建築物の意匠性を高められるのではないかと考えた」。竹中工務店技術研究所の大野定俊専門役はこのように説明する。

 狙いは他にもある。柱を樹脂で拘束して得られる一定の補強効果や、型枠製作を人から機械に置き換えることによる型枠職人不足の解消――などだ。