建設用3Dプリンターの市場は急速な拡大が予想されている。技術の現状と今後をデータとキーワードで読み解く。
市場規模の拡大は加速する見通し
米南カリフォルニア大学のバロク・ホシュネビス教授がセメント系材料を積層して建物を造る構想を打ち出したのは1990年代後半のこと。その後、欧州を中心に研究開発が活発化。2010年代に入って建設業界の巨大企業による投資が加速した。関心の高まりやデジタル技術の発展に伴い、今後、市場の急速な拡大が予想される(図1)。27年には約40億ドル(約4300億円)規模に成長するという米国の調査会社による試算もある。
10年たたないうちに40億ドル規模へ
中国が大型化で存在感
2019年6月現在、3Dプリンターで造った構造物の世界最高および世界最長の記録は、中国が独占しているもようだ。上海に本社を置くWinSun(ウィンスン)は、15年に3Dプリンター製の5階建て集合住宅を公開し、世界最高を宣言した。集合住宅は展示用とみられるが、鉄筋などで3Dプリンター製の壁材を補強して「中国の建築基準に準拠した」(同社発表)と説明している。
高さ世界一約14m
一方、19年1月には精華大学の研究チームが3Dプリンター製の歩道橋を完成させたと発表。長さ26.3mのアーチ橋で、世界最長を記録した。現在、オランダで長さ29mの3Dプリンター橋の架設が決まっており、記録は近く更新される見通しだ。