ものづくりのプロセスを抜本的に変える可能性を秘めた3Dプリンター。建設業が熱い視線を送るのが、コンクリートを“印刷”する技術だ。国を挙げた技術開発を進めてきたオランダでは、世界最長のコンクリート3Dプリンター橋が誕生しようとしている。最前線を追った。
オランダの首都アムステルダムから列車に乗って1時間半。同国随一の「発明都市」と呼ばれるアイントホーフェン市の一角に、その工場はあった。大きめの体育館ほどの広さを持つ施設に入ると、中央でレールの上に据えられた高さ2mほどのロボットアームが目に飛び込む。
ここは、オランダの建設会社BAM Infra(バムインフラ)などが立ち上げた欧州初のセメント系材料用の3Dプリンター工場だ。橋や住宅などの大型構造物やその部材の製造拠点として2019年1月に開設された。
「フェンスの外に出てくれ。今から“印刷”を始める」。ヘルメットをかぶった男性がこう口火を切ってノートパソコンのキーを叩くと、ロボットアームが緩やかに動き出した。先端に備えたノズルからクリーム状のモルタルを吐出して約1cmの厚さで積層。みるみるうちに1mほどの高さがある中空のブロックを築き上げた(写真1~3)。
バムインフラは3Dプリンターで橋を造り、架設した実績を持つ数少ない建設会社の1つだ。アイントホーフェン工科大学などと共同で、17年10月に当時世界初だったセメント系材料による3Dプリンター製自転車・歩行者橋を完成させた。
同社は現在、新たな挑戦に踏み出している。完成すれば世界最長となる新たな3Dプリンター橋の建設を、40万ユーロ(約4900万円)超で受注したのだ。