3Dプリンターに可能性を見いだし、建設業界に新風を吹き込もうとするスタートアップ。その技術を取り込もうと、世界最大規模の建設系企業も協業や出資を申し出る。注目のスタートアップ5社が挑む建設業界の革新に迫った。
XTreeE
自前のデザイン技術を強みに
年間5兆円超を売り上げる欧州最大手の建設会社Vinci(バンシ、フランス)から3Dプリンター技術の“お墨付き”を勝ち取ったスタートアップがある。フランスで2015年に創業したXtreeE(エクストリー)だ。17年11月、バンシのグループ会社がエクストリーへの出資を明らかにした(写真1)。
エクストリーは、モルタルを積層する3Dプリンターで、高さ4mの支柱や大型のパビリオンなどを造った実績を持つ(写真2)。バンシの他、セメント大手のラファージュホルシム(スイス)、ABB(スイス)、ダッソー・システムズ(フランス)といった巨大企業と提携し、現在も3Dプリンターを使った複数の建設プロジェクトを手掛けている。
エクストリーの強みは、高い品質と意匠性を兼ね備えた技術力だ。ロボットや材料などの積層に関わる技術だけでなく、3Dプリンター製造に適した設計を追求するデジタルデザインも一部、自社で手掛ける。
「製造と設計、両方の技術を磨かなければ建設用3Dプリンターの発展はない」。エクストリーのゼネラルマネジャーを務めるジャン・ダニエル・クン氏はこう言い切る。プリント技術だけが先行しても、適切な設計が伴わなければ従来のプレキャスト・コンクリートと比べたメリットが小さく、導入が進まないからだ。