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CyBe Construction
現地製造による合理化で先行

 「コンクリート3Dプリンターで建設業を再定義する」。2013年に創業したCyBe Construction(サイビー・コンストラクション)は、同社のホームページでこんな目標を掲げる。コンクリート製品を従来よりも早く、安く提供する技術として3Dプリンターに着目し、創業からわずか3年で機材と専用のモルタルを販売できるまでに技術を磨き上げた(写真4)。

写真4■ ベリー・ヘンンドリックスCEO。3Dプリンターを施工現場に持ち込むうえで、「建設会社で働いた経験が生きることが多い」と話す(写真:日経コンストラクション)
写真4■ ベリー・ヘンンドリックスCEO。3Dプリンターを施工現場に持ち込むうえで、「建設会社で働いた経験が生きることが多い」と話す(写真:日経コンストラクション)
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 創業者であり、最高経営責任者(CEO)を務めるベリー・ヘンドリックス氏は、父親が営む建設会社で施工管理をしていた経歴を持つ。「1つの建物を造るのに膨大な時間と人手を費やす仕事の進め方に疑問を抱いていた」とヘンドリックス氏は当時を振り返る。ちょうど、米国で話題になり始めた建設用3Dプリンターに可能性を感じ、独立を決めた。

 技術の核となる材料の開発には2年を要した。ヘンドリックス氏が特に重視したのは、モルタルが固まって強度を発揮するまでの時間だ。高速で積層しても自重で崩れないよう、数分以内に硬化を始めることを最低限の条件に据えた。

 手当たり次第に世界中の材料メーカーに問い合わせ、今のモルタルの原型を見つけた。ある会社が小規模な補修工事向けに開発したものの、引き合いが少なく、お蔵入りになりかけていた製品だった。

 そこから改良を重ねた現在のモルタルは、積層して3分以内に硬化を始め、およそ24時間で20N/mm2の圧縮強度を発揮する。価格は一般的なモルタルの3倍近くと割高だが、「工期を半分以下にすれば、コスト面でのメリットは確保できる」(ヘンドリックス氏)。

 16年以降、サイビー・コンストラクションは開発した3Dプリンターとモルタルを大型の建設プロジェクトで活用してきた。18年の秋には、サウジアラビア初の3Dプリンター住宅の建設を担当した。施工現場に3Dプリンターの機材を持ち込み、1週間で48個の部材のプリント作業を完了。3Dプリンターロボットをクローラーに載せ、設置場所を変えながら住宅の壁面を築いた(写真5)。

写真5■ サウジアラビアの住宅の壁をプリントする様子。風じんを防ぐために施工現場に仮囲いを設けてある(写真:CyBe Construction)
写真5■ サウジアラビアの住宅の壁をプリントする様子。風じんを防ぐために施工現場に仮囲いを設けてある(写真:CyBe Construction)
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 3Dプリンターを現場に導入してその場で部材を製作すれば、資材の調達などにかける時間を大幅に省略できる。しかし、気温や湿度の変化に応じた品質管理が難しいといった理由で、実践している会社はまだ少ない。サイビー・コンストラクションは各国のパートナー企業を通じて技術を世界に広げる展望を描く。

 「いずれは同じ機材と材料があれば、世界中のどこでも設計データを共有して同じ構造物を再現できるようになる。我々はロボットを売るのではなく、全く新しい建設プロセスを売っていく」。こう語るヘンドリックス氏の鼻息は荒い。