2016年の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城が、大天守の外観復旧を終え、19年10月に当初の予定通り一般公開を開始した。熊本市発注の下、大林組が施工を担当。熊本城復旧工事の新旧の所長である土山元治氏、金城知広氏の2人が、施工計画の専門部署で培った先読み能力を生かし、難工事をリードしてきた。工事はこれから大詰めを迎える。
熊本城の大天守の特別公開が、2019年10月5日に始まった。大天守の外観を、工事を休んでいる日曜祝日などに間近で見学できる。内部は工事が続いており、完全公開は21年春の予定だ。
大林組の土山元治氏は、熊本出身であることから白羽の矢が立ち、16年4月に飯田丸五階櫓(やぐら)の倒壊防止緊急対策工事のために他県から異動。同社が天守閣の復旧工事を受注した16年12月、所長に就いた。
飯田丸の緊急対策工事で16年7月に金城知広氏が加わり、天守閣の復旧工事では工事長として土山氏を支えた。土山氏は「安心して工事を任せられたので、所長として対外的な調整などに集中できた」と話す。土山氏は19年3月に熊本城の現場を離れ、金城氏が所長を引き継いだ。
両氏とも施工計画の専門部署を経験。「そこで培った先読み能力が事前申請や安全な公開ルートを1年前に決める際などに生きた」と振り返る。16年12月に工事を受注し、約1カ月で計画を作成。約3カ月の審査を経て、17年5月に仮設足場を設置した。短い工期だからこそ、できる限り早く着手する必要があった。
熊本市は16年7月、天守閣の復旧を急ぎ、19年までに少なくとも大天守の公開を再開する考えを示していた。そこで、19年秋に公開するため、市と現場で1年前から調整を始めた。1年先に工事がどのような状況で、市民などが安全に見学できる範囲はどこか、精度の高い計画が必要だった。ここでも先読み能力が生きたという。