谷口吉生氏が設計を手掛けた博物館とホテルが、2019年の7月と9月にオープンした。「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」と「The Okura Tokyo」だ。それぞれの内部に、父・吉郎氏による建築空間を「再現」した。自身が過去に手掛けた建築の改修も相次ぐ中、「葛西臨海水族園」の解体問題に直面している。
著名な建築空間をどう継承するか。2019年、谷口吉生氏は2つの「再現」の形を示して見せた。
1つが、金沢市で7月に開館した「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」だ。一般の人々にも建築の魅力を伝えるため、住んでいた土地を谷口家が寄贈し、市が建設した。
建物の2階には、谷口氏の父・吉郎氏(1904~79年)が設計した迎賓館和風別館「游心亭(ゆうしんてい)」(東京都港区、74年完成)の広間と茶室を原寸大で再現した。
実物の游心亭を訪れるには予約が必要だが、建築館ではより多くの人々が身近に空間を体験できる。7月の記者発表会で谷口氏は、原寸大の理由を問われて、「父の建築はプロポーションが重要。それは図面だけでは分からない」と答えた。