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 日経アーキテクチュアによる「10大建築人2020」で7位に入ったのは、設計事務所「大西麻貴+百田有希/o+h」共同主宰の大西麻貴(おおにし・まき)氏と百田有希(ひゃくだ・ゆうき)氏。これまで住民に対する「説明の場」にとどまることが多かった設計初期のワークショップを、新たな建築空間を創造していく「対話の場」に変えようと試み続ける。

 設計の初期段階に住民などの関係者と対話を重ね、様々な居場所を持つ空間構成を生み出す――。大西麻貴+百田有希/o+h(東京都中央区)を共同主宰する大西麻貴氏と百田有希氏の設計の特徴だ。

 両氏は、京都大学の学生時代からユニットを組み、若手設計者の登竜門とも言える「SDレビュー」で2007年、鹿島賞を受賞するなど、20代から頭角を現した。大西氏個人は2006年の「せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦」で3位に入賞している。現在2人は、30代半ばにして、国内外で数多くのプロジェクトを手掛ける。

改修中のオフィスに立つ「大西麻貴+百田有希/o+h」の大西麻貴氏(右手)と百田有希氏(写真:山田 愼二)
改修中のオフィスに立つ「大西麻貴+百田有希/o+h」の大西麻貴氏(右手)と百田有希氏(写真:山田 愼二)
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 18年度のJIA新人賞を受賞した「Good Job! Center KASHIBA(グッドジョブ!センター香芝)」(16年、奈良県香芝市)は、o+hとして本格的な活動を開始して「取り組み方の原点」(大西氏)となったプロジェクトだ。伊東豊雄建築設計事務所に勤務していた百田氏が独立後の第1作でもある。

 Good Job! Center KASHIBAは障害がある人たちとともに、アートやデザイン、ビジネスの領域を超えて、社会に新しい仕事をつくり出すための施設だ。建て主は、福祉施設にとどまらず、「違いを認め、違いを大切にする」という次の社会の在り方を示す建築を求めた。

「Good Job! Center KASHIBA」(16年)の南館の外観。奈良県香芝市に立つ(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
「Good Job! Center KASHIBA」(16年)の南館の外観。奈良県香芝市に立つ(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
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 約2年にわたる設計期間の中で、「建築の空間によって働き方が変わることなどを実感し、世界の見え方が180度変わった」と大西氏は振り返る。11年の東日本大震災後の復興計画に携わって以来、人と出会うことで現実社会における建築の在り方を知り、視野が広がったという。

 空間は、壁や屋根が直交せずにぱらぱらと集合し、多角形の部屋がつながる構成で、強固なルールに基づくものではない。伊東豊雄建築設計事務所時代は「構造と意匠が一致した明快なルール」を追求してきた百田氏だが、大西氏と協働する中で「それは建築の良さの一部」と考えが変わったという。

Good Job! Center KASHIBAの南館内部。分節された壁や家具の集積で、人の気配が感じられるひとつながりの空間をつくった(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
Good Job! Center KASHIBAの南館内部。分節された壁や家具の集積で、人の気配が感じられるひとつながりの空間をつくった(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
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南館1階の工房を見下ろす。自主製品をはじめ、企業や団体との商品開発や、ものづくりワークショップを通して様々なものが生まれる(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
南館1階の工房を見下ろす。自主製品をはじめ、企業や団体との商品開発や、ものづくりワークショップを通して様々なものが生まれる(写真:大西麻貴+百田有希/o+h)
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 利用者とともに使い方を考えながら形を決めていくプロセスを経て、百田氏は「スタイルや手法の開発にとどまらず、建築をつくることを通じて、どういう価値をつくるのか、自分たちが何を大切に成長していくかが見えた」と設計活動の原点を振り返る。

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