「10大建築人2020」で、建築設計者として隈研吾氏などの著名建築家とともに選ばれたのが、9位の三菱地所設計・須部恭浩氏だ。同氏が設計を担当した「台北南山広場」と「追手門学院大学 ACADEMIC-ARK」は、ともに日経アーキテクチュアの表紙を飾った。4年以上にわたる中国での設計活動で培った提案力が最大の武器だ。
大阪府茨木市に2019年4月、開校した追手門(おうてもん)学院大学「茨木総持寺(そうじじ)キャンパス」。正三角形の平面を持つ大学校舎「追手門学院大学 ACADEMIC-ARK(アカデミックアーク)」がそそり立つ。地上5階建てで、高さは約22m。2階から5階までの外周は全面、ステンレス鋳物製のスクリーンで覆われている。
内部は、学生が集う1階ホールを囲むように、4層の吹き抜けまわりに教室が並ぶ。ホールの上には図書館を収めた“箱”が浮いている。校舎を分棟にしないで1つに集約し、にぎわいを生み出すプランだ。
三菱地所設計建築設計三部チーフアーキテクトの須部恭浩氏にとって、国内で担当したプロジェクトが完成するのは約10年ぶりとなる。「1棟に集約したプランは学校建築では恐らく前例がないと思う。発注者にこの形、考え方を受け入れてもらえるか。設計を受注するまでは気苦労が続いた」。こう須部氏は振り返る。
須部氏の大きな武器は、08年から4年以上にわたる中国での経験だ。「発注者とは個人対個人の関係だった。短期間での提案が求められ、構造コアといった専門用語を用いても理解してもらえない。瞬発力が身に付き、言葉も鍛えられた」(須部氏)
発注者には東京・丸の内の説明を求められる機会も多く、丸ビル(丸の内ビルディング)などの構成を須部氏なりに読み解く機会にもなった。