全1635文字
PR

 スズキは、軽自動車の新型ガソリンエンジンで最高熱効率を約37%に高めた。「軽」エンジンで「最高水準」(同社技術者)とし、ホンダに迫るとみられる。ダイハツ工業や日産自動車・三菱自動車連合を交え、「軽」エンジンの効率向上競争が激しくなってきた。

 2020年1月20日に全面改良する2代目「ハスラー」に、新型自然吸気ガソリン機「R06D」を搭載する。気筒の行程(ストローク)と内径(ボア)の比率であるS/B比を1.20(行程73.8mm/内径61.5mm)とし、現行機「R06A」の1.07から大幅に「ロングストローク(長行程)」にした。現行機に比べて最高熱効率を1ポイント高めるのに大きく貢献した。

スズキの新型自然吸気ガソリンエンジン「R06D」
スズキの新型自然吸気ガソリンエンジン「R06D」
軽自動車用で排気量は0.66L、3気筒、圧縮比12.0、最高出力36kW(6500rpm)、最大トルク58N・m(5000rpm)。吸排気に油圧式可変バルブタイミング機構(VVT)を搭載する。またハスラーのターボ仕様車では現行エンジン「R06A」を流用する(日経 xTECH撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 スズキの長行程化は、軽自動車エンジンの開発を先導するホンダを「かなり意識」(スズキ技術者)して開発したものだ。

 ホンダが2017年に発売した「N-BOX」から搭載するガソリン機「S07B」。S/B比で1.29という乗用車エンジンで最高水準とみられる長行程を実現した。最高熱効率は37%超に達したとみられ、「軽」エンジンの開発で各社が長行程化に走るきっかけになった。

 日産・三菱自連合は2019年3月に発売した「デイズ」「eKワゴン」で、S/B比を従来機の1.00から1.14に長行程化した。ダイハツはかねて1.12と比較的長行程で最新機では変更しておらず、スズキの1.20は日産・三菱自とダイハツを上回り、ホンダに続く位置に達した。

 長行程にして熱効率を高められるのは、ピストン圧縮時の上死点で燃焼室のS/V(全表面積/容積)比を小さくできて、燃焼した火炎の冷却損失を抑えられる点が大きい。

 加えて、気筒の内径が小さくなり、中心付近で点火してから気筒壁まで火炎伝播(でんぱ)する時間を短くできることも熱効率向上に寄与する。耐ノッキング(異常燃焼)性が高まり、圧縮比を上げられる。スズキは新型機で圧縮比を12.0に高めて、ホンダに追いついた。現行機は11.5だった。

 一方で長行程化するとエンジンの背が高くなり、車両に搭載しにくくなる。しかも生産ラインで大きな変更を伴いがちだ。

 ホンダは車体や生産ラインを見直してこれほどのロングストロークを実現したようだが、スズキは既存の車体やラインを大きく変更しない範囲で設計し、S/B比は1.20が限界だった。

2代目となる新型「ハスラー」
2代目となる新型「ハスラー」
現行ハスラーは2014年度に年間11万台以上売れて、スズキの担当者が「驚いた」というヒット車になった(日経 xTECH撮影)
[画像のクリックで拡大表示]