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 オンライン診療をはじめとした「遠隔医療」に注目が集まっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がる中で、医療機関における集団感染が深刻な問題になっているからだ。新型コロナウイルスに感染しているとは思わず、病院を受診し、結果として感染を医師・看護師に広げてしまったケースもある。そうした中で、政府は直接接触せずに診察するオンライン診療を解禁した。オンライン診療は長年、構想としてはあったが、様々な理由から実現していなかった。それが、新型コロナウイルスという緊急事態において実現した形である。

 現時点(2020年4月20日時点)では、感染拡大が収束するめどは見えていない。医療崩壊を起こさないという観点でも、遠隔医療への期待は大きい。これから実用化が本格的に始まる遠隔医療の分野には、どのような技術ニーズがあり、どのような事業機会があるのか。遠隔医療を支える技術を俯瞰(ふかん)することによって、意外な参入チャンスが見えてきた。

遠隔医療システム分野の狙いどころを探る

 遠隔医療の2大技術である「遠隔医療システム」と「遠隔手術」について、それぞれ詳しく解析した。これらは、遠隔医療を支える技術の中でも特に特許出願が多い。

 遠隔医療システムは多くの技術に支えられているが、これらの技術を俯瞰解析すると、技術間の違いが見えてくる(図1)。中でもレッドオーシャン化しているのは、「A:生体情報」と「B:診療予約情報」の技術である。例えばBに含まれている「診療予約システム」では、NEC(紺色)の特許件数がやや多いが、個人も含めて出願人の裾野はとても広く、参入者であふれかえっている。

図1 遠隔医療システムの技術を特許で俯瞰
図1 遠隔医療システムの技術を特許で俯瞰
(出所:VALUENEX)
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 一方、レッドオーシャン以外の領域に特許を出願している事例がある。「C:遠隔診療支援方法及び遠隔診療支援システム」(日立製作所)や「D:遠隔診療支援システム及び遠隔診療支援方法」(メドケア)などである。CとDは、特許の名称だけでは、その技術的な違いは見えない。しかし、俯瞰解析をすると、2つの特許の内容は図1のように大きく離れていることが分かる。Cは処理・操作コマンドを中心とした特許であり、Dはユーザー端末にどのように情報を表示・伝送するかの特許であるからだ。そして、メドケアは2015年に設立された比較的若い会社であり、この領域での特許出願は2018年に集中している。このように遠隔医療システムにおいても、各社が参入時期を問わず差異化を図っていることが俯瞰解析から見て取れる。

 EのキヤノンやFのKDDIも同様の事例であり、レッドオーシャンとは一線を画していることが分かる。キヤノンの特許は診断医の支援に特化しており、KDDIの特許はテレビ電話での対話に特化している。このように、自社の強みや特定の人やシーン、機能に特化することで優位を築けるチャンスは十分にあるといえる。